“22世紀を創る人”を育てる教育改革

【三宅】ソフトバンクが家庭用ロボット「ペッパー」を売り出しました。あれも人工知能を搭載していて、学習能力がある。おそらく、英語や算数の家庭学習にも使えるのかなという気がします。

【鈴木】そうなったときに人間の役割、人間の仕事というのは何なのかということをきちんと考える必要があるでしょう。そして、本当に人間が身に付けておかなければいけない学力といいますか能力ですね。それを考えた上で、人生の基本である幼稚園から小中の初等教育、高校・大学の高等教育を議論していかなければなりません。

一方で、2045年を視野に入れるだけでは不十分です。何を申し上げたいかというと、いま2015年ですから、現在15歳の子どもたちは2000年ぐらいに生れているわけですね。日本人の平均寿命は90年。おそらく、さらに医学が進歩しますから、100歳を超えるのもそう遠い時期ではないでしょう。特に女性は。そうすると、いまの中学生が2100年まで生きるということになります。小学生については確実にそう断言できます。

私が文科省の人たちによく言っているのは「われわれは、いまの学習指導要領にしても入学試験についても、これが対象にする子どもたちは2100年まで生きるんだ」ということです。すなわち、彼らは“22世紀を創る人たち”ですね。それまでには、いろいろなことがあるはずです。文字どおり、山あり谷あり、もうほんとに想定外の連続だと思いますけれども「そういう人生を幸せに生きていけるようにしていくことが、われわれの仕事である」と。

【三宅】そこまで長く深く考えておられる。

【鈴木】実はいま、OECD(経済協力開発機構)のグリア事務総長と私の合意に基づいて「2030年に向けた教育の在り方に関する政策対話」の場を持っています。ここでは、新しい時代にふさわしいカリキュラムや授業、アクティブ・ラーニングをはじめとした学習・指導方法、学習評価などの意見交換をしてきました。そこでは、日本がある意味でキャプテンのような部署に位置づけられています。10カ国から15カ国が参加していて、これまで欧米が敷いてきた道を踏まえ、日本がパイオニアとなって道なき道を切り拓こうというポジションに立っていることも知っておいてください。

【三宅】長い歴史のスパンで見た、教育の意味合いというのを理解せずして、新しい展望は開けないということがわかりました。制度も変わります、大学入試が新しくなりますというと、どうしても目先の変化にとらわれがちですが、いまの話をしっかり咀嚼した上で、教育改革を見守っていくことが必要だということですね。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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