1000に1人しかいないリードユーザー
もちろんこうした開発担当者に気づきを与えてくれるリードユーザーは、ごく少数しか存在しない。例えば、ハンブルク工科大学のLuthjeは2043人のユーザーからリードユーザーを特定したがその数は全体のわずか1.1%、22人だったという。私たちが昨年行ったアメリカと日本の消費者を対象とする調査でも同様な結果だった。ユーザーイノベーションを行ったと判断された消費者は全体の3~5%。この調査は全製品を対象としたので、特定の製品分野に絞ってイノベーターを探す場合には割合はさらに下がると思われる。100人を調査して1人該当者がいるかどうか、1000人集めても10人いるかどうかといった程度、あるいはそれ以下ではないだろうか。だとすればこうしたごく少数のリードユーザーを効率的に探し出す手法を開発することが重要になる。
リードユーザーを探し出す原始的な方法はあるといえばある。スクリーニングという方法だ。何年も前にビジネス雑誌の記事で読んだ程度なので、その真偽は定かでないが日本電産では営業担当者は事業者名簿を使い、そこに載っている全企業に対して営業をかける方法をとっているという。現在、販売している製品にモーターを搭載していなくても開発中の製品にモーターを搭載しようと計画している企業があるかもしれない。そうした潜在的ユーザーは、こちらから営業して初めて見つけ出すことができる。そう考えて名簿に載っている企業をすべて訪問するのだという。
スクリーニングは日本電産のこうした営業方法に似ている。リードユーザーが含まれていそうなユーザー名簿を作成し、そこに記載されている対象者全員に対して調査しリードユーザーを探し出すのだ。
確かにスクリーニングは全数調査なのでリードユーザーを探し出せる可能性は高い。しかし、リードユーザーがごく少数しかいないことから考えると、それにかかる労力が大きいことが問題だ。