ネイティブの取引先を激怒させてしまった……! よかれと思って取った行動や発言で、なぜ困惑や怒りを招くのか? 日本における英語教育の第一人者が正しい接し方を伝授する。
「サイン」ではネイティブには通じない
日本人がよかれと思って話している英語が、ネイティブにはうまく伝わっていないということがありますよね。
例えば、私がある会社を訪問したとき、受付の方に“Please sit down.”と言われ思わず“Oh, I'm sorry.”と答えてしまったことがあります。なぜ自分は謝ったのだろう……と考えると、これって学校の先生が生徒に「ウロウロしないで座りなさい」というときの表現なんですね。この場合は、“Please have a seat.”が正しい表現です。
ビジネス英語でよくある間違いといえば、“Can I have your sign?”でしょうね。日本語では「サイン」が定着していますが、英語でsignといえば星座のこと。合意の署名という意味ならば、signatureにしなければなりません。
伝えたいことが伝わらないだけでなく、ネイティブを怒らせてしまいかねない、要注意の単語としてはexpectがあります。前向きな感じがしますが、“I expect you to come on time.”なんて言うと、「時間通りに来るのを期待しています」ではなく、「絶対に来い」と怒っている、それだけでなく不信感すら含まれている感じですね。expectは相手がやっていない、納期が遅れているときの表現なんです。同じことを柔らかく表現するには、“You need to be here at 9 o'clock.”とすれば「9時に来れば大丈夫ですよ」になりますし、簡潔に“See you at 9.”でもOKです。
それから、意外な落とし穴がpleaseです。日本人はpleaseをつければ何でも丁寧な言葉だと思っている人が多いのですが、実は使いようによっては危険な言葉で、たとえばタクシーで“I'm in a hurry, please.”とか、“Please go faster.”とか言うと、いらいらしてプレッシャーをかけている感じがします。同じように“Please shut the door.”と言うと、「ドアを閉めてくれ、それくらいのこともできないのか」と聞こえることもあるのです。