地球の裏側の、逆の視点もまた正なり
アルゼンチンで取材をしたときに、草原で牛を飼うガウチョ(カウボーイ)たちがビタミンをとるためにマテ茶を飲んでいた。最近は日本でも人気のお茶で、その豊富な栄養から「飲むサラダ」との異名もとる。日本では急須やティーポットに茶葉を入れて湯を注いでカップで飲むか、あるいはペットボトルでゴクゴクとやるだろう。
ところが、本場での飲み方は大きく違う。ひょうたんのカップに茶葉を入れて湯を注ぎ、先が茶こしになった鉄やアルミのストローをさして飲む。ストローの先が茶こしになっているおかげで茶葉が口に入らず、しかも熱いお茶を熱いままにいただける仕組みだ。
急須かティーバッグで茶葉を濾して飲むのが“正しい”私たちにしてみれば、なぜカップに茶葉を入れ、茶こしのついた、しかも金属系のストローで熱いお茶を飲むのか不思議に思える。実際、ストローを通って口に入るお茶はかなり熱い。一説によると、草原で生活をするスタイルの中で、水筒のようにこぼさず、しかも南極に近い寒い土地柄で熱いお茶を熱いままに飲むためだという。ガウチョたちにしてみれば、むしろティーポットを汚して熱いお茶をカップに移し、冷まして飲むこともない……のかもしれない。
お茶の入れ方ひとつでも、逆もまた真なり。どちらが正しいわけでもない。
「当たり前」の概念を崩すことは難しいが、こうして考えてみれば、自分で勝手に“これが当たり前、あちらは間違い”だと思い込んでいるだけで、本当は生かせる視点や発想はたくさんあるのかもしれない。
デレク氏は「正しいことの逆は、また正しい」というインドの言葉を紹介していた。奇妙に見えても、ただ違うだけ。互いに“ふつう”の文化であり、特にスペシャルなことではない。それでも、地球の裏側の当たり前にヒントをもらうような視点を持つことで、画期的な製品が生まれたり、すばらしいプロジェクトが生み出せたりするのかもしれない。
では、ビジネスでこうした「視点を変える」発想を見ていこう。