「教育」が「虐待」に変わる瞬間

どこまでがしつけや教育的指導で、どこからが教育虐待になるのか。児童シェルターを運営する弁護士は次のように説明する。

「子供を自分と同じ1人の人間なんだと思うことができているかどうか。それが教育的指導と虐待の違いだと思います。同じ言葉を発していてもそこが違えば、子供が受けとるメッセージも違います。つい子供を叩いてしまっても、あとから『叩かなければよかった』と思えるようなら、それは親として間違ってしまっただけ。親も子供も未熟だから、少しずつ成長していけばいい」

私は最近『追いつめる親 「あなたのため」は呪いの言葉』という本を書いた。その過程で、壮絶な教育虐待の事例をいくつも聞いた。中には命を落としてしまったケースもある。多くの場合、教育虐待をされているそのときに自殺するのではない。受験が終わってから、もしくは大人になってから、心のバランスを崩し、自ら命を絶つケースが多いのだ。

そんな結末になることがわかっていたら、誰も子供を追いつめるようなことはしないだろう。しかしその時点では、親には教育が虐待に変わるその一線が見えていない。親は常に、その一線が見えていないことを、もしかしたらその一線をすでに越えてしまっているかもしれないことを、十分に自覚する必要がある。

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