謙虚さなしには学ぶことができない

問題がますます複雑化しているグローバルな市場では、どんな人でも、ひとりであらゆることを知ることはできない。グーグルの人事部門担当上級副社長、ラズロ・ボックが、新規採用者に求める特質のひとつは謙虚さだというのは、そういう理由からだ。

「最終目標は、問題解決のためにみんなで一緒に何ができるかだ。自分のやるべきことをやったら、一歩退くことが大切だ」と彼は説明する。それは単に他の人々が貢献する余地をつくるために身を引く謙虚さを言うのではない。「それは知的謙虚さだ。謙虚さがなければ、人は学ぶことができない」と、ボックは言う。

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われわれの会社、カタリストが先ごろ行った調査は、謙虚さは、さまざまな背景を持つ社員が「受容されている」と感じる環境をつくる4つの重要なリーダーシップ要因のひとつであることを明らかにして、ボックの考えを裏づけた。オーストラリア、中国、ドイツ、インド、メキシコ、アメリカの1500人以上の労働者を対象にしたこの調査で、上司の利他的な、すなわち無私無欲の行動を目にしている社員はそうでない社員より、男女を問わず職場集団に受容されていると感じる可能性が高いことが明らかになった。そうした利他的な行動には、次の特徴が見られた。

(1)批判から学ぶ、間違いを認めるなどの謙虚な行為
(2)フォロワーが学習や能力開発に取り組めるようにする
(3)より大きな利益のために個人的なリスクを引き受けるなどの勇気ある行為
(4)部下に結果に対する責任を負わせる

上司の利他的な行動を目にしている社員は、そうでない社員よりイノベーティブで、新製品のアイデアやよりよい仕事のやり方を提案するということも明らかになった。そのうえこうした社員は、チームの責任あるメンバーとして行動する可能性も、そうでない社員より高かった。

組み合わせることで、社員に自分はこの集団に受容されていると感じさせる2つの別の根本的感情、すなわち独自意識と帰属意識を区別することも、この調査のおかげで可能になった。社員は、自分がチームにもたらす独自の才能やスキルを認められたとき独自意識を持ち、同僚と重要な経験を共有するとき帰属意識を持つのである。

部下の独自意識と帰属意識の適切なバランスをとるのはリーダーにとって厄介な仕事であり、独自意識を重視しすぎると帰属意識を低下させることがある。だが、われわれの調査が示すところでは、利他主義はほぼ例外なく、部下のこのバランスを維持できるリーダーの重要な特質のひとつである。

全体的に、われわれの調査はひとつの平凡な、そしておそらく普遍的な言外の意味を浮かび上がらせる。多様性の包含を促進し、その見返りを手にするためには、リーダーは無私無欲のリーダーシップ・スタイルを用いる必要があるということだ。われわれの先ごろの調査と、現在行っている、ロックウェル・オートメーション社のリーダーシップ開発手法に関する調査にもとづいて、そのための具体的な方法を説明しよう。