こうして信頼感が増せば会話も弾み、相手の本音も出てくる。こちらの提案に興味を持っているのかどうかも表情に出る。
相手によっては、雑談抜きで本題に入ったほうが喜ばれるケースもある。相手の見極め、そのときの空気の見極めは経験の積み重ねがモノを言う。
もちろん、最初からうまくいくわけはない。
「よく人間関係が苦手という人がいますが、それは自分から飛び込まないからです。失敗してもいいから一歩踏み出してみてください。話しかけるタイミングや話題の選び方は失敗から学ぶものです。思い出すのも恥ずかしいような思いをしてこそ、人生の機微がわかるようになります」
お笑いコンビとして活躍しているサバンナの高橋茂雄さんも“空気”を読むことの重要性を強調する。大学在学中から舞台に立ち、先輩芸人たちとの接触を通しての得がたい体験をもとに、次のように話す。
「周囲とのコミュニケーション言うても、人間関係から始まるんやと思います。僕たちの世界でも仕事をたくさん頼まれる人は、ほんまに感じがええ。それって、周りを客観的に見ていて、気遣いができているからやないですか」
そして、その「感じのよさ」は一朝一夕に出せるようになるものではないのだと続ける。
「工夫で何とかするものというより、その人が持っている空気。それは日ごろの態度や行動から出ることやから、急にええ人に思われたいと思ってやってみても、無理なんです」
そんな高橋さんが心がけるのは、スタジオで共演者やスタッフと顏を合わせた際、挨拶は基本中の基本としながらも、無理矢理話しかけないことだ。
「例えば、ステージの合間に『あの映画、もう観はった?』と聞いて返事をしてくれない場合、それは『いま疲れているから話しかけるな』というサインかもしれないと察するべきやと思います」
▼顔と名前を覚えてもらうワザ3カ条
【1】訪問先の情報収集は念入りに
【2】玄関先で褒めるポイントを見つける
【3】失敗してもいいから自分から飛び込む
林文子
1946年、東京都生まれ。ホンダ、BMWなどで営業を担当。BMW東京、ダイエー、日産自動車販売などでトップを歴任。2009年より現職。『しなやかな仕事術』など著書多数。
植木義晴
1952年、京都府生まれ。慶應義塾大学法学部を中退後、航空大学校へ。75年に卒業し、日本航空(JAL)入社。2010年、執行役員(運航担当)、12年2月、社長就任。
高橋茂雄
1976年、京都府生まれ。94年よりお笑いコンビ「サバンナ」を結成。「太鼓持ち芸人」として知られ、テレビや劇場を中心に活躍中。