重要数字を頭に叩き込む
こうして自宅で全体的な情報を頭に入れ、6時半に出社してから本格的な分析に取りかかる。ここでもまず押さえるのは海外動向だ。例えばニューヨークダウの上昇値だけではなく、どういうセクターや銘柄が買われているか、あるいは各種経済統計を参照し、その数字がさらに米国の景気拡大を示唆するものなのか、一時的なものなのかなど深掘りしていく。株価であればチャートを確認し、現在の位置を頭の中に入れていく。
このとき、パソコン画面の数字を、大学ノートの見開きページに書き写すのが藤戸流。
「英単語を書いて暗記するのと同じで、書くことによって頭に焼き付けます。あるメーカーの株価は130ドルなどと書きながら、チャートの形や業績の動向、そのメーカー関連のニュースを見て、そこの数字もどんどん書いていく。もちろんパソコンで見ればすぐわかりますが、見た数字が頭の中に入ってないと、具体的な相場観はつくれません」
世界の動向を踏まえた全体像が頭の中にできて初めて、外国人の目で日本企業の業績について具体的な予測が立てられ、そこからさまざまな投資のアイデアが出てくるというわけだ。
家では一切マーケットを見ない
藤戸さんがこの「書く」ことにかける時間は、朝の約1時間半。ここで「世界の情勢と日本企業」を分析した結果は、各支店の営業担当者などの情報源となる。分析作業が終われば、それをもとに自社サイトに掲載するレポートや経済誌への寄稿原稿などの執筆に取りかかる。
分析や執筆をする午前中は、集中力が必要な時間帯だが、メディアからの問い合わせも多い。特に前日の相場が大きく動いた翌日は早朝から電話が殺到、分析作業と並行しながら対応するため、8時をめどにしている作業の終了がずれ込むこともある。
「執筆の時間は、集中できる環境を確保するようにはしていますが、取材にはできるだけ対応します。メディアを通じて自分の考えを述べることができ、より広く人の目に触れられますから」と情報発信の大切さを語る。とはいえ集中力はとぎれてしまわないのだろうか。
「それはもう、チャンネルを切り替えるのと同じように、強制的に切り替えるしかありません」
突然テレビ局に行くことになれば、どんどん終了時間がずれこむが、仕事は必ず社内で完結させ、家には持ち帰らない。原稿の依頼も、前倒しで受けるようにしている。