M&A先進国のアメリカでは、経営統合の果実を生み出すまでの手順をPMI=ポストM&Aと呼んで重視する。狭い意味のM&Aは、合併や買収の成立という節目の一時点を意味するが、本来のM&Aとは、その前後を含めた、ダイナミックな企業の統合過程そのもの。つまりPMIこそ、M&Aの真髄であり、そこには一般の事業会社に応用できる手法も多く含まれる。それらのなかから、経営者、そして売上げアップを考えるリーダーのためのエッセンスをご紹介しよう。

いかに統合のシナジーを生み出すか

M&A(企業の買収・合併)は、日本においてもますます、活発になってきています。

買い手側にとっては、少ない時間とリスクで必要な経営資源を手に入れる手段として、売り手側にとっては、事業承継問題の解決、何より企業の存続と発展、そして社員の成長のための手段として、M&Aに関心を寄せる経営者も増えています。

私は「日本M&Aセンター」の創業メンバーとして、これまで四半世紀にわたって1000件、2000社を越えるM&Aの成立に関わってきました。当社はM&A支援会社として、初の東証一部上場も果たし、友好的M&Aを支援するコンサルティング会社として、国内で最大の規模と実績を誇っています。

ところが近年、「買収した子会社の経営が、うまくいっていないのです」という話を、少なからず耳にするようになりました。いったい、なぜでしょうか。

『M&Aを成功に導くPMI』事例に学ぶ経営統合のマネジメント(プレジデント社刊)

それは、M&Aが「身近な経営戦略」になってきたのにもかかわらず、いや、むしろ身近になったからこそ、経営者が十分な知識や情報や、M&A後のビジョンをもたないまま、合併や買収を行うケースもまた、増えているからです。

企業を買ったら、買いっぱなし。とりわけ深刻なのは、経営者同士がお互いの企業文化についての理解が不十分なままで行われるM&Aでしょう。これでは統合のシナジー(相乗効果)はもちろん、企業の発展や社員の成長はとうてい、望むことができません。

これに対して、早くも19世紀には企業の合併や買収が活発に行われていたM&A先進国のアメリカでは、経営統合の果実を生み出すまでの手順をPMI(M&A後の経営統合=Post Merger Integration)と呼んで重視しています。

「M&Aは誰でもできる。しかしM&Aの成功は、誰にでもできるわけではない」

私はこの言葉を、アメリカの有名ファンドであるリバーサイドの共同最高経営責任者、スチュワート・コール氏から伺いました。

リバーサイドは、業績が好調な中堅企業の買収に特化した、世界でトップクラスのファンドです。彼らの特徴は、企業の価値を上げることにフォーカスした統合手法にあります。

私は「M&Aの成功は、誰にでもできるわけではない」現実を目の当たりにしながら、彼らの統合手法を学ぶことで、M&Aの成功率を上げることができるのではないかと考えたのです。