2度の見積もりで納得の葬儀を

日本エンディングサポート協会(JESS)理事長 佐々木悦子氏

死後の名前をつける戒名料の相場もわかりにくい。信士・信女は×万円、居士・大姉は××万円とさらに上がり、院号がつくとより高額となるのが一般的。「院号は、当寺に一定額以上の寄進をした檀家にしかつけない」という菩提寺も多い。

イオンも葬儀業界に参入当初は、お布施の金額を公式サイトで明示し、大きな話題を呼んだ。当時の資料によると、読経一式+「普通戒名(信士信女)又は、普通法号で25万円」、同「居士大姉戒名で40万円」、同「院号居士大姉戒名、又は、院号法号で55万円」となっていたが、全日本仏教会から猛反発を受けて、ネットで示すことは取り下げた。「イオンというブランドで金額を示すと、その金額が全国の基準と誤解を招く」という言い分に応えたという。現在は、葬儀を行う葬儀社を通じて口頭で伝えている。

佐々木氏も戒名について調査した経験があり、次の説明が腹に落ちたという。

「新幹線にたとえると目的地まで着く時間は同じでも、自由席・普通車指定席・グリーン車のどれに乗るかで価格が違う。一緒の目的地に行くために先祖や連れ合いに合わせるのです」

リーズナブルになったとはいえ、葬儀には何十万円という費用がかかる。後悔しないためにどうすればいいか。

佐々木氏は2度の見積もりを取ることを勧める。一度目は、先々の課題として葬儀を考える段階だ。

ここではネットなどで情報収集して、まずは気になった業者に連絡。電話の対応など感じがよかったら資料を取り寄せる。イオンや小さなお葬式を、この検討段階に入れてもいい。そして必ず「15人の家族葬」など、同じ条件を提示して各社から見積もりを出してもらう。

その内容を比較検討したうえで、これはと思う業者の会員になる。会員になるほうが、さまざまなサービスを受けられて、使い勝手がいいからだという。

2度目に見積もりを取るのは、実際に葬儀をする段階だ。やることも多くて時間は限られるが、できればほかの業者の見積もりを取っておけば料金交渉の材料となる。

今後の葬儀は高齢化・核家族化も手伝い、「実施件数が増えても規模は縮小」することで専門家の意見は一致する。

かつて不透明と言われた葬儀業界も、かなり透明化されてきた。しかも情報収集が簡単に行える時代。葬儀にまつわる儀礼や専門用語を調べて理論武装したうえで業者と向き合い、納得した葬儀ができる“見おくりびと”となりたい。