あなたの仕事の「ハーバード指数」は?

さて、ハーバード公衆衛生大学院では諸外国からの留学生向けに、授業が始まる前に“学び方講座”といえる準備講座が用意されている。この講座で身に付けるべきとされるスキルは、そのままトップエリートの仕事術といえる内容なので紹介したい。

3週間かけて行われる「プロフェッショナル・コミュニケーション・セミナー」と題されたハーバード公衆衛生大学院のプログラムで学ぶスキルを、ビジネスに置き換えてみた(原典はこちら http://www.hsph.harvard.edu/educational-programs/professional-communication-seminar-pcs/。あなたは、普段の仕事でどれだけできているだろうか? チェックしてみよう。

(1)【書くスキル】企画書は、客観的事実や同僚の意見を取り入れて作成しているか?

単なる思い付きではなく、1つのテーマを様々な角度から吟味して、提案することが大切。参考となる書籍や記事などを添え説得力を高めたり、立場の違う人に相談したりすることで、より良いアイデアに昇華できる。

(2)【読むスキル】新聞や仕事に関する資料、メールを読むことに、必要以上に時間をかけていないか?

ハーバードでの講義は「とにかく学生に負荷をかけて、能力を伸ばそうとするものだった」と吉田さん。大学院生の課題として出される論文や著作は平均600ページほどで、1ページ1000単語くらいの文章を読んで、レポートの提出を求められる。

大量の資料をいかに早く、要点をつかみながら読めるかが勝負だ。セミナーでは資料にざっと目を通す「スキム・リーディング」の技術や、「この著者はどうしてこの文章を書いたのか?」「何が論点か?」「どんな客観的事実が引用されているのか?」などを意識しながら読む技術を学んだという。

2年間、ハーバード公衆衛生大学院でみっちり学び、無事卒業。ご主人や子供たちと記念写真を。
(3)【対話するスキル】インフォーマルな機会を通じて、仕事関係者とコミュニケーションを取っているか?

会議などの席だけでなく、ランチタイムなどを利用して、仕事関係者とは積極的に意見交換することが求められる。1日は24時間。ビジネスのアイデアや課題の突破口を見つけるのに、オンタイムだけ使っていてはダメなのだ。

(4)【話すスキル】自信に満ちた話し方ができているか?

外国人を交えた会議で、日本人にありがちな「英語が聞き苦しいかもしれませんが……」と自分を卑下する発言はご法度だ。

「誰もが自分の話を聞きたがっているし、それだけの価値があると自信を持って話す。話すのが楽しくてたまらないという顔で話す、ということを教わりました」(吉田さん)

さらに、聴衆がどんな人なのかを把握し、ニーズを考えたり、最初の30秒で興味を引く話題を入れたり(つかみ)、聴衆とアイコンタクトを取ったり、専門用語や略語を排して、短いセンテンスで話すなどの技術を学ぶという。NHKの「スーパープレゼンテーション」や、今年5月に行われたアメリカ議会での安倍首相の演説はこれらの要素を押えているので、参考にしよう。

(5)【会議での姿勢】議論の場で違う意見を出すことができるか?

日本では、反論したり、違う意見を言ったりすることをためらいがちだ。しかし、異なる意見を出すことは衝突や対立ではなく、よりよいものに昇華させるためのプロセスと考えられている。

「『それいいね、こういう考え方もあるけど、どうかな?』『なるほど、わかった。こういう見方もできるんじゃない』など、NO,BUTではなく、YES,ANDで付け加えていきます」(吉田さん)

異なる意見を出すといっても、相手の意見をより良くするという姿勢で話すと受け入れられ、自分の意見も通すことが出来る。

(6)【コラボレーション力】人に助けを求めたり、人を助けたりしながら仕事をしているか?

会社などの組織で人と協力して仕事をするのは当たり前。そこで問いたいのは、人の助けを借りるだけでなく、自らも直接評価につながらなくても、人にアイデアを提供したり、助けたりしているかということだ。

ライバルの足をひっぱったり、自分の手柄にならないことに非協力的なら、いつかそのツケが自分に返ってくる。ほかの人と協力し合ってこそ成功できるというエリートの原則を、いつも実践してほしい。