どうすれば人々の心を震わせるようなスピーチができるのか。歴史をたどってみると、どんな天才も、ゼロから作り出しているわけではなく、影響を受けた思想や参考にした書物があることがわかる。

ここでスピーチをとりあげる6人の政治家・経営者のなかには、大平正芳のように一般的には訥弁と思われていた人物もいれば、盛田昭夫やジョブズのようにスピーチの上手さに定評のある人物もいる。彼らに共通するものを強いてあげるとするなら、自分の言葉を持っていたということだろう。

大平は、古今東西の書物から言葉を引用しながら、それを自分なりに解釈して政策を提言することができた、日本では希有な政治家だった。対照的に、本田宗一郎は「高等小学校卒」という学歴で、本はほとんど読まなかったが、持ち前の明るい性格もあって、常に自分の目標に社員を巻きこむ弁舌の才能を持っていた。