機構運営の変革は痛しかゆし!?
しかし、これまでなら退任する8副会長すべてを新任に入れ替えるのが常だったのに対し、今回は6人の新任副会長にとどめ、最高意思決定機関の会長・副会長会議により中身の濃い審議とすることを狙ったとみられる。ただ、6月の総会で選任される新任副会長の顔ぶれをみる限り、旧態依然の人選は否めないのも事実だ。退任する8副会長のうち大宮英明・三菱重工業会長、畔柳信雄・三菱東京UFJ銀行特別顧問、宮原耕治・日本郵船取締役相談役の3氏の後任は、それぞれ出身企業から起用される申し送り人事で、残る新任副会長も出身業界・企業からの順送り、横滑り起用が専らだからだ。
半面、同じ役員人事でも、副会長など重要ポジションへの登竜門とされる審議員会(会長の諮問機関)の副議長には異例の起用があった。経団連初の女性役員として英国の通信大手BTの日本法人、BTジャパン(東京都港区)の吉田晴乃社長を内定したからだ。安倍晋三政権が掲げる女性が活躍できる社会の実現に擦り寄った点は言うまでもなく、50歳という団体史上最年少役員という点でもサプライズに違いない。
副会長枠削減、政策委の再編と経団連が打ち出した一連の組織運営変革は、経済界、とりわけ、かつては「財界総本山」と称され、政治力のあった経団連の地盤沈下に対する危機感も反映している。しかし、政策委の委員長は、副会長や審議員会副議長ら役員が就く重要ポストであり、一連の変革でその数が減れば、ポストの“格”に連動するとされる会員企業からの年間会費が減り「団体の収入面に確実に響く」(事務方)。団体の資金面で、機構運営の変革は痛しかゆしといった面は否めない。