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左図:自罰行為の「見える化」で失地回復 右図:「アンダードッグ効果」で修羅場をしのぐ

一方、立正大学講師で心理学者の内藤誼人氏は腹を立てた取引先の溜飲を下げさせるには、“自罰行為”をするのがもっとも効果的だと話す。

「謝罪の言葉は当然必要ですが、それだけで先方が納得することはないでしょう。誠意も大事ですが、目に見える形で自ら罰を受けることを表明するのです。不良品に換えて納品し直すときに納品数を割り増しする、また次回納品分の料金を大幅に値引く、といった先方にメリットとなるような対処がコトを収めるのにはもっとも適切といえるでしょう。表面上は渋い顔をしていても、贈り物や割引というご褒美がうれしくない人はいないのです」

よって、口先での謝罪は効果なしと思えたら、たとえ会社から禁止されていたとしても自腹を切ってお菓子などを「お詫びではなくお見舞いです」などと持っていけば、それで水に流してくれるケースもあると内藤氏。

謝罪の可視化のなかには、土下座をしたり丸坊主になったりするということも含まれるという。お詫びの言葉だけでは心苦しいので、何か「形」として反省する気持ちを伝えたい、といった手法はベタだが、案外、効き目があると内藤氏は語る。

「心理学でアンダードッグ効果という言葉があります。これは不利な状況にある人に手を差し伸べたくなる人間の心理の表れです。怒りに燃えていても、相手が涙目、大汗、紅潮……と必死に謝罪をしてくれば、まあ今回は大目にみるか、と丸く収まることもある。そんな芝居じみたオーバーアクションなんかできないという人は多いですが、いざというときはトライしてみる価値はあります」(内藤氏)

謝罪の急所:謝罪の「可視化」が何よりの薬

高井伸夫(たかい・のぶお)
弁護士。1937年生まれ。東京大学法学部卒業後、1963年に弁護士登録。企業の雇用調整によるリストラ問題、企業再生の各種相談や講演活動をおこなう。
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者。立正大学講師。有限会社アンギルド代表としてコンサルティング業務をする一方、執筆業に力を入れる心理学系アクティビスト。
(大塚常好=構成)
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