いずれ利益が出ても後手に回ってはダメ

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参入方法によるメリットとデメリット

熟考を重ねました。最初に思ったのは、「自前でスタート」はいずれ利益が出たとしても、事業展開が他社の後手後手に回ってしまい、競争に後れをとってしまうだろうということ。

実を言うと、ボーダフォンとは当初、買収ではなくMVNOで協力してもらうということで、すでに4カ月ほど交渉し、話もほぼまとまっていたのです。

彼らから、いわば卸売りを受けて携帯電話事業を始めようと。しかし最終的には設備を借りるのではなく、買収して本格参入することになった。なぜ、MVNOを捨てたのか。

事業を起こすからには将来的には「1位」が目標です。しかし、ボーダフォンの基地局数は他社に比べて少なく、電話がつながりにくい。だから、MVNOで始めても恐らくお客様に迷惑がかかる。僕の考えるデジタル情報革命は、いつでも、どこでも、誰とでも、どんな情報でも、やりとりできるようになること。当時、ボーダフォンは基地局の設備投資をする期間を3年間に定めていましたが、それを一気に半年間に前倒しすれば、そうした欠点も解消できるのではないか。それを実現するには、100%買収する方法しか残されていなかったのです。

一橋大院教授 GCAサヴィアン取締役 佐山展生氏が解説

佐山展生氏

手堅い経営戦略をとるファーストリテイリングの柳井正さん(ソフトバンク社外取締役)が、後押しをしたことで知られている。携帯電話市場における中長期的な事業戦略を考えた場合、地道な営業努力の積み重ねでは不可能と判断したのだろう。このようなリスクの伴う思い切った決断ができる経営者は、日本にはほとんどいない。孫さん、柳井さんのほかには、オリックス元会長の宮内義彦氏や伊藤忠商事会長の岡藤正広氏ぐらいだろう。

●正解【A】――他社の設備では満足できるサービスができない

※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。