もっとも、超富裕層の絶対数は増えても、彼らは株高の恩恵を受けた「元からのお金持ち」 (NRIの宮本弘之・上席コンサルタント)。 新しい富裕層が大幅に増えているわけではない。

「これから安倍政権の成長戦略が機能すれば新しい富裕層が出てくると思います。しかし足元の動きを見ると、元富裕層の復活のほうが多いと思われます」と宮本氏はいう。

年収で見るとどうだろうか。

かつて国税庁が公表する全国高額納税者名簿をもとに、所得額を推計して富裕層研究に役立ててきたのが『日本のお金持ち研究』 (橘木俊詔・同志社大教授との共著)などで知られる森剛志・甲南大学経済学部教授である。しかし「肝心の高額納税者名簿が個人情報保護や犯罪誘発防止の観点から05年を最後に公表されなくなったため、網羅的な調査は不可能になってしまった」 (森氏)。

09年からは上場企業役員のうち役員報酬1億円以上の人の名前が公開されているが、高額納税者名簿に比べたらはるかに情報量が少ない。お金持ちの収入は、かつてより見えにくくなってしまったのだ。

とはいえ、超富裕層の資産は単純に年収を積み上げた結果ではなく、多くは事業の成功や世襲による。誤解を恐れずにいえば、超富裕層にとって年収はさほど重要ではないのである。

【アドバイザー】
野村総合研究所 主任コンサルタント
 米村敏康(よねむら・としやす)
東京工業大学大学院理工学研究科修了後、野村総研入社。金融コンサルティング部に所属。専門は金融機関の事業戦略立案、営業改革等。
野村総合研究所 上席コンサルタント 宮本弘之
(みやもと・ひろゆき)
東京工業大学大学院理工学研究科修了。金融コンサルティング部長。著書に『プライベートバンキング戦略』(米村氏との共著)などがある。
甲南大学 経済学部教授 森 剛志
(もり・たけし)
京都大学大学院博士課程修了(博士号取得)。研究分野は家計経済、経済格差。著書に『新・日本のお金持ち研究』などがある。
(武内正樹、永井 浩=撮影)
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