ピケティ氏が1月に来日した際には、さまざまなメディアが大きく取り上げた。

トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』。この本が、ピケティ氏の母国のフランスだけでなく、アメリカや日本でもベストセラーになったのは、時代の必然であろう。

経済のグローバル化に伴い、さまざまな変化の波が各国に押し寄せている。そんな中、人々は、自身の働き方や、ライフスタイルについて模索し、新しい方向性を探っている。未来に対する不安が、ピケティ氏の論への関心を高めた。

「r>g」。資本収益率は、経済成長率を上回る。真面目に働いているだけでは、経済成長に見合う賃金の上昇しか享受できず、資本、すなわちすでに蓄積された富の増大に追いつけない。そのような格差を是正するために、富裕な層に対する累進課税を国際的に進めるべきだというのがピケティ氏の主張の根幹である。

たいへん興味深い論点だが、税制の変更などは国の政策であり、個人でどうこうできることではない。『21世紀の資本』の論を受け、社会の中で生きる一人の人間として、できることは何だろう?

ピケティ氏の著書から受け取るべきメッセージの一つは、それぞれの個人も、自分のできる範囲で株式などへの投資を行うべきだ、ということかもしれない。

もともと、日本人は、貯蓄があっても、リスクを伴う投資に振り向けることが少ないと言われている。資本収益率が、経済成長率を長期的に上回るのならば、各個人も、いわば人生の「ポートフォリオ」の一部として、自身の資金を(たとえ少額でも)資本に投入するのが正しい。そのためには、国としても少額投資をしやすい環境をつくるという政策が有効だろう。

ピケティ氏の議論を、一人の人生における「生き方」へと応用すると、そこには、さらに興味深い論点が表れる。