――サポートグループのように、自分と同じような状況にいるひとが複数いるグループに入るのはいかがでしょうか。

【ターナー】それはすばらしい考えですね。もし9つのアプローチを実践したいけれども何から始めたらいいかわからない場合、フェイスブック・コミュニティがあります(https://www.facebook.com/RadicalRemission)。わたしはそこに新しい研究が出てきたら載せています。毎日希望が出てくるようなことを書いています。それを読むだけでも、何から始めたらいいかわかると思います。

もし自分がやっていることが友だちからあまりよく思われないのなら、そういう友だちとは距離を置いて、自分がやっていることに賛同してくれる友だちを見つけることも重要です。

――この本がきっかけとなって企業からも接触はありましたか。

【ターナー】ちょうど今日、サンフランシスコのバイオテクノロジー企業から連絡があり、「劇的寛解をした患者の遺伝子を研究したい。あなたが研究している患者とどのようにしたら連絡できるのか」という問い合わせを受けました。劇的寛解をした患者の遺伝子プロファイルを研究することは重要です。何か遺伝上のヒントが見つかるかもしれません。

特に最近重要なことはエピジェネティクス(※)です。遺伝子が同じでもどの遺伝子のスイッチがオンになって、どれがオフになっているかということです。これは単に遺伝子解析をするだけではわかりません。

――エピジェネティクスは遺伝子研究でもっとも重要な分野ですね。一卵性双生児は遺伝子上は100%同じですが、スイッチがオンになっている遺伝子、オフになっている遺伝子が異なるので、性格も能力も違います。

【ターナー】そうなのです。「劇的寛解を経験した患者は、免疫システムを強力にする特別な遺伝暗号を持っているのではないか」と言う人もいます。その可能性はあると思いますが、同じ人が20年前にがんになったときの遺伝子発現と、劇的寛解をしたあとの遺伝子発現が異なることも考えられます。つまり、わたしが本に書いた9つのアプローチを実践して、特定の遺伝子のスイッチがオンになったという可能性もあるのです。

エピジェネティクスの研究で明らかになったのは、毎日30分の瞑想を8週間続けることで著しく遺伝子発現が変ったということです。つまり、瞑想はがん遺伝子のスイッチをオフにして、健康を促進する遺伝子のスイッチをオンにすることができるということです。

※DNAの塩基配列変化によらずに遺伝子発現を制御・伝達するシステムおよびその研究領域のこと。

Dr. Kelly A. Turner ケリー・ターナー博士
腫瘍内科学領域の研究者。学士号を取得したハーバード大学時代に統合医療に関心を持ち、カリフォルニア大学バークレー校にて博士号取得。博士論文研究では奇跡的な回復を遂げた1000件以上の症例報告論文を分析し、1年間かけて世界10カ国へ出かけ、奇跡的な生還を遂げたガン患者と代替治療者を対象に、治癒に至る過程についてのインタビューを行った。本書はそこから得られた知見を患者や家族、そして健やかに生きたいすべての人のためにわかりやすくまとめた著者初の書籍。
(ジャーナリスト 大野和基=インタビュー・撮影)
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