「議員になってみると、まわりの議員はとんでもなくバカだった」

憤るのは無理もない。市議たちは「政務調査費」を使い、タイのアユタヤ遺跡や大分の別府温泉への「視察旅行」を繰り返していた。07年9月には領収書偽造の詐欺などの疑いで市議の一人が書類送検されている。この市議は今回の出直し選挙にも出馬したがあえなく落選した。

最高は3700万円!市民も驚いた高額退職金
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最高は3700万円!市民も驚いた高額退職金

08年には市長選へ立ち、500票差で辛勝。「ブログ市長」の異名はこのとき以来だ。選挙活動中にもブログの更新を続け、公職選挙法違反のおそれがあると警告を受けると、「総務省のほうがおかしい」と噛みついた。職員の給与公開もまっさきにブログで報告した。

「市の職員がこんなに厚遇とは知らなかった。もし『自分はがんばっているから文句を言われる筋合いはない』という職員がいるなら堂々と言えばいい。でも、誰も言ってこんよ」

鹿児島県統計協会がまとめた阿久根市民の年間所得推計は一人当たり186万9000円。市職員のボーナスにも届かない。給与構成は「逆ピラミッド型」。年功序列で誰でも昇給するうえ、若者の採用を少なくしているからだ。

とどめは退職金だ。06年度に退職した28人のうち15人は3000万円以上。市民の所得から考えるとばか高い。

「市内で新築のきれいな家は大方公務員の家。夫婦共稼ぎで、城のような家に住んでるのもいるわ」

給与や退職金の公開には一部から強い反発があったが、気にかけない。この4月には職員の大量降格を断行した。

「でも給料は下がらないんだよ。地方公務員法で、たとえ降格されても『人事管理の円滑な運営』のため給料は下げられない。公務員は二重三重に守られてる」

手腕は強硬だが、語り口は飄々としている。公務員の異常な世界に怒りを感じているのかと問うと、首をかしげた。

「怒りではない。うーん、ただ切ない」

そして、こう結んだ。

「市民のために働ける役所にしたい」