高成長を支えるローカライゼーション

高級旅行カバン大手のサムソナイトが、日本市場での売上高を拡大させている。この5年間で21億円から63億円と3倍増だ。意外なのは、このうち40%をノントラベル商品で稼いでいることだ。

実際、サムソナイト・インターナショナルはM&A(合併・買収)を加速している。2012年には、カジュアルバックのハイ・シェラ、高級カバンのハートマンを買収、14年には女性向けファッションバッグのリップオールト、携帯・タブレット用ケースのスペック、高級アウトドアバッグのグレゴリー・マウンテン・プロダクツなど、新進ブランドを次々買収し、世界に広がる自社の流通網を通じて販売を拡大させる。旅行カバンが主力ビジネスであることは間違いないが、旅行需要に左右されない経営体質の構築を目指している。

そこで、今後の日本およびアジアにおけるビジネス戦略を、サムソナイトアジアのプレジデント、レオ・スー氏に聞いた。

――アジア、そして日本での業績が好調のようですが理由は?
レオ・スー 
サムソナイトアジア プレジデント

最近、アジア各国における旅行需要が高まったことで、同時にスーツケースの需要も増えてきました。そうしたマーケットに向け、ハイエンドには高級旅行カバンの「ハートマン」を提案。その下に「サムソナイトブラックレーベル」、さらに中流以下向けのミドルランクの「アメリカンツーリスター」まで、マルチブランド展開をすることで、幅広い価格レンジ・ターゲットへの訴求が可能となったことが理由の一つです。

と同時に、当社の企業文化は、常に新しいチャンスを探し、そこに合わせて成長戦略を実行していくというものです。グローバルブランドでありながら、それぞれの国のニーズを先取りしたアイテムも提供しています。多くの人たちは、サムソナイトと聞いて旅行カバンという印象を持っていることでしょう。

しかし、当社の商品別売上構成では、ノントラベル、すなわち旅行カバン以外が40%に達します。ブリーフケースやバックパックのような日常的に使うものです。特に日本では、レザーグッズを日本のチームでデザインして、日本で製造するというやり方を採用しました。私どもはこれを"ローカライゼーション"と呼んでいますが、これが高い成長率につながっているのではないでしょうか。