伊藤忠の肉薄で御三家から四天王に
総合商社大手6社の2010年3月期連結決算は、売上高で全社14.6~28.7%減、純利益は14.3~53.7%減と大きく前年を下回った。第一の要因は鉄鉱石・石炭など資源価格の下落にあるが、これは想定内のこと。資源・エネルギーは“諸刃の剣”である。その証拠に、2010年4~6月期連結決算では一転し、中国の需要増が石炭や鉄鉱石の価格を押し上げ、大手6社の純利益合計は前年同期の約2倍に達した。今回響いたのはむしろ、日本航空株関連の損失である。
2010年1月、経営再建の道を模索していた日航が、東京地裁に会社更生法適用を申請、事業会社としては戦後最大の経営破たんとなった。三菱商事の純利益が前年比26.2%減の2731億円と大きく萎んだのは、日航関連の損失231億円に加え、三菱自動車の経営支援で引き受けた優先株の関連損失167億円の影響。同様に、純利益が15.7%減の1497億円に減った三井物産も、日航優先株では200億円の損失を計上している。
だが、こうした業績の乱高下が気にならないほど、総合商社の給料は高い。たとえば三井物産の従業員一人当たりの年収は1261万円、月平均105万円。新卒・一般職の女性社員も含めた全社員6177人の平均値で、しかも前年より181万円も減ってこの額なのだ。
毎年繰り広げられる御三家のトップ争いは、ここ数年三井と住友の年番模様だが、2010年は住友商事1321万円が制した。2位は三菱商事1301万円、3位が三井物産1261万円、4位に伊藤忠商事1257万円。伊藤忠は年々3位との差をつめており、今回は4万円の僅差に迫った。業績同様社員の給与においても、御三家改め“四天王”と呼ぶべきかもしれない。
特に減少幅が大きい三井物産(181万円減)は、「成果主義の見直し(定性評価を8割に)はとうに終わっている。業績に連動した結果」と言い、双日(168万円減)も「業績連動。特に賞与が抑えられたのが大きい」と、両社広報とも経営環境の厳しさを第一に挙げた。
化学、鉄鋼、機械・半導体などの専門商社も、同様に全社マイナス。食品は安定性を実証した格好だが、OUGHD(旧大阪魚市場の持ち株会社)を除く5社平均は606万円。同じ商社でも扱う商品により倍近い年収格差が生じる。なお、東邦HD(134万円増)は、持ち株会社になって初の決算ゆえの大幅プラスである。
※すべて雑誌掲載当時