グローバル化、業界再編、リストラ……、企業を取り巻く環境は激変している。ライバル会社はどうなっているか、徹底レポートする。
年収1000万円超は30代で当たり前
業績好調も過度な資源依存が指摘されていた大手総合商社。2013年3月期決算こそ資源価格下落の影響で軒並み減益となったが、脱資源への取り組みが実を結び業績は回復基調にある。同年9月中間期連結決算では、大手5社のうち住友商事を除く4社が、前年同期に比べ最終利益を増加させた。アベノミクスによる円安の追い風もあったが、三菱商事は自動車関連、三井物産は化学品や鉄鋼製品、伊藤忠商事は食品というように、資源以外の事業が収益回復に貢献。総合商社の懐の深さをあらためて印象づけた。
30代で年収1000万円超が当たり前の総合商社マン。平均年収は三菱商事の1419万円を筆頭に双日までが1000万円超の高給業界だ。従業員数からもここ数年の好調ぶりがうかがえる。リーマンショック前の07年度比(単体)で、上位各社はマンパワーを温存しつつ高給を維持している。
いうまでもなく、総合商社最大の資産は人である。組織人たることを求めず、個々の能力を最大限に発揮させることで商機を拓く。大きな権限が与えられる一方、責任やプレッシャーも半端ではなく、タフでなければ生き残れない。
「土日出勤は当たり前。若いころは残業200時間超の月が何度もあったから、今どきのブラック企業なんてもんじゃない。それでもみんな楽しんで仕事をしていた」と、ある商社社員は振り返る。大リストラも経験し、同期入社で定年まで勤め上げた人は半数もいないという。
「誰もが将来は社長と認める人はまず社長にならない。仕事ができる人は大失敗も多い。それでコースを外れたり、20代でヘッドハンティングされ、外に出ていく者もいる。頑張りすぎて過労死した人も少なくない。最後に残るのはいちばん優秀というより、いちばん運の強い人じゃないですか」
総合商社ではここ数年、異色のトップ人事が話題を集めている。歴代鉄鋼畑出身者が続いた住友商事は、ほぼ30年ぶりに自動車部門や資源・化学品事業出身の中村邦晴氏を昇格させた。伊藤忠の岡藤正広氏は、海外駐在経験がなく、経営企画部門にも在籍せず、同社原点の繊維部門から36年ぶりの社長誕生となった。昨年4月、下馬評を覆して社長に就任した丸紅の國分文也氏は、同社の看板の電力インフラ、食料事業とは関係なく石油畑出身だ。今をときめくシェールガスビジネス開拓の実績が買われた。強運と天賦の才を兼ね備えた実力者が、総合商社を牽引していく。