図を拡大
インフォグラフィックス(Openstreet Map(CC-BY-SA)Copyright 2013 FUJITSU LIMITED)

もちろんオープンデータは、ビジネスにおいても重要な価値を持ちます。たとえばショッピングモールの買い物客はどこから移動してきたのか、チラシを見てきた人はどこに住んでいるのかといったデータを可視化すると、地区ごとの集客力の有無が一目瞭然です(図参照)。私たちが“物欲が発光する絵”と呼ぶこの図は、一部に独自入手データを使っていますが、大部分はオープンデータから得たものです。それでも小売業の人が見れば、出店に関して何かしらのヒントを得られるのではないでしょうか。

オープンデータといっても、行政のデータは人口などの基礎的なものばかりで役に立たないと考えている人は多いでしょう。しかし、その認識は改めるべきです。行政のデータはバラエティに富んでいて、たとえば統計局が提供する家計消費からは、餃子の消費量で宇都宮市と浜松市が争っていることや、浜松市では餃子だけでなく焼売の消費量も全国で5本の指に入るということまでわかります。私たちが想像する以上に、行政は多様なデータを持っているのです。

データ活用について学びたいなら、オープンデータのイベントに参加するのもいい。私も委員を務める「LOD(リンクト・オープン・データ)チャレンジ」では、統計局やJAXAの人がデータを持ってきて、参加者にデータ活用のアイデア出しをしてもらったり、実際にアプリケーションを発表してもらっています。オープンデータの活用法に戸惑う人も、具体的な事例に触れることで視野が広がるはずです。

最後にアドバイスを一つ。資料をつくるとき、自分が思いついた仮説の裏づけとしてデータを使う人が多いですが、それはデータを用いて仮説をもっともらしく見せる小手先の手段にすぎません。そうしたやり方は、従来の仮説検証型アプローチで解けない課題にぶつかったときにすぐボロが出ます。

データ活用において大切なのは、自説をデータで飾ることではなく、データの出す答えに素直に耳を傾けること。たとえば、データ分析して「ダウ工業株価指数が上がると池袋のタクシーが減る」という結果が出たとき、「因果関係が説明できない」といって笑い飛ばすのか、それとも「ダウが上がったときは空車を池袋に回す」という提案書を書くのか。ビッグデータ時代のビジネスパーソンは、そこでセンスが問われるのです。