大企業の最前線で活躍するエース社員たちの心を支え、成功に導いた本がある──。彼らのサクセスストーリーとそのバイブルを紹介しよう。
114台を売り日本一に輝く
仕事における第一印象の大切さはいうまでもないが、根本欣司郎氏(39歳)と挨拶した際にパッと感じた“明るくよい空気”は、顧客を掴む大きなアドバンテージになっているようだ。
ただインタビュー中、長身の体を少し前屈みにした緊張気味の表情からは、フォルクスワーゲン(VW)ジャパン販売で昨年114台を売ったナンバーワン・セールスという実績は想像しづらい。
「一般にいわれる営業のノリノリの感じとは、私は違うんじゃないかと思います。もともと他人と話すのも得意ではないので、就職した頃は周りの人たちも『大丈夫?』という反応でした」
大学卒業後、「車が好きだから」という理由で、いまとは別系列の販売店に就職し、VWの営業を担当。販売店の閉鎖にともない、2009年9月VWジャパンに転職した。セールスにとっての一つのハードルである年間100台超えをできたのは、この16年間で5度目という。
根本氏の販売店では、飛び込み営業はほとんど行っていない。店舗にふらっと訪れた新規顧客には、順番に応対するため受ける数は全員ほぼ同じになる。
「販売台数を増やすには、1件あたりの確率を高めることしかないんです」と根本氏。接客、商談にはどのような特徴があるのだろうか。
「和みながらというか、少し心を許していただいて、お客様自身に選んでいただけるようにしています」
……それだけで売れれば営業マンも苦労はないのだが、結果的に「買っちゃった」「今日買うつもりじゃなかったのになあ」という新規のお客様が多いという。