「夏の火鉢、旱の傘」人遣いの天才!

家臣たちのモチベーションをあげるための官兵衛の手練手管、いわば人遣いの妙はまだまだある。「適材適所」に人を配置することもそのひとつだ。

官兵衛が残した言葉に「夏の火鉢、旱の傘」がある。夏の火鉢も、かんかん照りの日の傘も、役には立たない。ところが冬になったら火鉢は暖かいし、雨が振れば傘でしのげると助かる。つまり、ある局面では全く使えなくても、別の局面では大きな力を発揮できる。官兵衛は人物もこれと同じで、多角的に人材の能力をチェックして起用していくことがリーダーとしての務めと知っていた、と火坂さんは見ている。

「官兵衛は人間観察力に優れていました。だから仮に、石田三成に槍や鉄砲を持たせて戦わせても、すぐ倒されてしまうけれど、城の中でそろばん勘定や兵糧の調達などをやらせたら、てきぱきとこなしてしまうと見きわめられる。『おまえはこんなこともできないのか』と叱り飛ばし、人の短所ばかり目がいくようなリーダーは二流ですが、人の能力は千差万別と悟ってそれぞれの長所を発見してやったり引き出したりするのが一流。『夏の火鉢、旱の傘』と語った官兵衛にはそうした意識があったのだと思います」(火坂さん)

単純に兵の数だけを増やせばいいのではなく、一人一人の得手不得手を勘案して人材配置する。得意なことを伸ばさせる。そうすれば組織に相乗効果のようなものが生まれ、より強さを増す。そんな体制づくりをしている官兵衛に、家康は一目置いていたに違いない。

また、人材配置ということでいえば、官兵衛は家臣同士の相性にも細かく目を配っていたというから、かなり高度な組織編成をしていたことになる。火坂さんは語る。