中国の定期預金利率は1年物で2.25%(中国銀行HP)。リーマンショック後に利下げしたとはいえ、日本円よりははるかに利率がよい。

しかし、中国現地の銀行では、日本語はほとんど通じず、英語にいたっても窓口担当者全員が話せるとは限らない。

「北京語ができないなら、通訳を雇わないと難しいでしょう」とAさんも言う。

解約時にも問題は立ちはだかる。現段階で、中国系の銀行でネットバンキングの手続きをしても可能なのは国内送金のみ。解約する際には現地に再度渡航し、通訳を連れて手続きを代行してもらわなければならない。

また中国では、今のところ口座をつくった市か省内の同じ銀行でないと定期預金は解約できない。たとえば上海の中国銀行でつくった定期預金口座は、上海市内の中国銀行に行かないと解約できないのだ。

さらに、中国国内で元を外貨に戻すには両替証明書に記載された額の50%以内という制限があるため、預けた額すべてを円転することも容易でない。

「元切り上げ自体は数年内にあると思いますが、それと変動通貨になることは別です。現地で使わないならあまり旨みはないかもしれませんね」(Aさん)

以前は香港でも元預金が可能だったが、現在は、居住証明がないと口座はつくれない。

結論としては、出張などで中国に頻繁に渡航する人で、信用できる通訳を雇えるなど言葉の問題をクリアできるなら、元に投資してみるのもよいだろう。そうでない場合、現時点での安易な投資は避けたほうが無難。

「投資代行業者などもあるようですが、知らない人に現金を託し、暗証番号なども知られるわけですから、リスクが高いと言える」(Aさん)

人民元の国際化への動きは少しずつ加速している。09年9月28日、香港で本土外初の人民元建て国債が発行された。金利は2年物で2.25%、3年物が2.7%、5年物は3.3%(5年物は機関投資家のみに販売)。香港で証券口座を開設する必要があるとはいえ、本土で元に直接投資するより容易で、間接的に元に投資したことになる。円高に焦らず、まずは気長にウオッチしてはいかがだろう。