共働き夫婦に子供ができたとき、妻が専業主婦となって子育てに専念するのか、産休を利用して共働きを続けるのか。夫の収入の安定が約束されない時代、悩ましい問題だ。
出産を機に退職した女性に話を聞くと、「もともと給与が安いうえに、子供も保育園に預けると、収入の多くを保育料に持っていかれる。それでは子供を預けるために働くようなもの」という声が多い。
では、実際に収入のどの程度を保育料に費やさねばならないのか。25~29歳女性正社員の平均賃金は月額約24万6200円(平成20年賃金構造基本統計調査)。手取りでは約20万円だ。一方、認可保育園の保育料は自治体や世帯収入、子供の年齢によって異なるが、都内で世帯の所得税額が50万円の場合(世帯収入750万円程度)、0~2歳児で月4万円台。延長保育込みなら約5万円で、手取りの4分の1が保育料に消えることに。
残業が多い女性なら、延長保育でも対応できず、さらなる二次保育を必要とするケースもある。ベビーシッター代は1時間1200~1500円、自治体による子育て支援サービスであるファミリーサポートは1時間600~800円が相場。熱を出して保育園に預かってもらえないときに病児保育を利用すると、1時間2000~2500円がかかる。働き方によってこれらのサービスの利用頻度は違うが、ベビーシッター代に月5万円以上費やしている人は、利用者の40%を超えている(全国ベビーシッター協会調べ)。保育料と二次保育の費用で、収入の半分が消える計算になる。
しかし、家計を長期的なフローで見ると事情が変わってくる。28歳で第一子、31歳で第二子を生んだケースで考えてみよう。出産のたびに産休を1年間取得して復帰したとすると、女性正社員の平均生涯賃金は約2億5700万円になる(大卒で60歳定年と仮定。平成17年度版国民生活白書より)。そこから第一子出産までの賃金を差し引いても、出産を機に会社を辞めて専業主婦になれば、2億3500万円以上の生涯賃金を手放すことになる。