“兄弟の共有名義”は絶対に避けるべき

現在、二世帯住宅を計画中なら、実際に建てる前に子供たちを集め、子供どうしが納得のいく形で財産の分配を決めておくことが望ましい。

1つの方法が生前贈与である。二世帯住宅を建てる際、同居する子に土地と建物を相続させる代わり、同居しない子には金銭を贈与する。もらう側にとっては、自分が高齢になってから相続を受けるより、子供の教育などで物入りの時期に生前贈与をしてもらうほうがありがたい。

親が亡くなったとき、自宅以外に分け与えられる財産がないなら、同居していた子は、他の兄弟に金銭を与える(代償分割)か、土地を切り売りするか、土地あるいは不動産の所有権の一部を渡すしかない。

敷地が広ければ、二世帯住宅を敷地いっぱいに建てないで、親が亡くなったときに一部を切り売りできるよう、あらかじめ分割を想定して家を設計する方法もある。相続のときには同居していない子に、空けておいた土地を譲るのだ。その場合は設計の際、施主から建築士にきちんと説明しておく必要がある。

図を拡大
二世帯住宅の相続でモメる事例

分けられるほど広くない場合も、土地を兄弟の共有名義にすることは、絶対に避けるべきである(図右)。

同居予定の子が受取人となる契約で親に生命保険をかけておけば、親の死後、保険金を原資として代償分割を行うことが可能になる。ただ親がそれなりの年齢になっていると、保険に加入できるとは限らない。

まずは建築前に親族で話し合い、結果はできれば司法書士や行政書士などの専門家に頼んで、公正証書の形で遺言を残しておくこと。そこまでやっておけば、その後トラブルになることはまずないだろう。

らいふでざいん雅庵代表 山岸多加乃
1963年生まれ。1級建築士、CFPとして二世帯住宅の住まい方、相続対策を提案。著書に『絶対に後悔しない 二世帯住宅のつくり方』。
(構成=久保田正志)
【関連記事】
30代から考えたい「親の相続」
両親の死後、田舎の実家を少しでも高く売るには
もめない!損しない!遺言書の正しい書き方
中古物件の「住宅ローン」と「リフォームローン」の選び方
子への住宅資金は生前贈与か、相続時精算課税か?