『職業としての学問』を翻訳して

【勝間】今日、私が一番知りたかったのは、三浦さんはこうしていろいろ世の中の事象を分析すること自体が楽しいのかな、ということなんです。分析によって得られる結果そのものより、皆が見逃していた潮流に気づくことのほうに面白さを感じていらっしゃるのかな、と。

【三浦】今、マックス・ウェーバー(*14)の『職業としての学問』を翻訳しています。「職業=ベルーフ」は日本語では「天職」とも訳されますが、今、就職雑誌などを読むと「天職」という言葉が、「一生やっても飽きない楽しい仕事」というような意味で使われている。でも、本来の天職というのは自分の意思で決めたものではなく、天から、神様から「おまえ、これをやれ」と言われて決まった仕事なんです。僕の社会分析も、どちらかといえば天に命ぜられてやっているんじゃないかと(笑)。

【勝間】だから、楽しいばかりではないということですね。三浦さんがこれまでのお仕事の中でそう実感されたのはいつ頃のことですか?

【三浦】「アクロス」の編集をしていたときは自分の能力と資質が100%生かされて働いているという意味で天職だと思っていました。ただ、天職って、自分の能力をフル稼働しちゃうから疲れるんです。「アクロス」を8年やったらへとへとでした。だから三菱総研に行ったときは、天職じゃなくていいからもっと楽に働こうと思ったんですが(笑)。今はまた、天職に戻りましたんで、疲れても、嫌になってもやり続けろと天が命じているんだなとあきらめました。

(※すべて雑誌掲載当時)

*12:メタ認知(meta-cognition)…自分で自分の考えていること、していることを知ること。metaはギリシア語の「超える」の意味。

*13:フレームワーク…「情報について、まずは共通する軸を見つけ、その軸に基づいて階層化や分類を行い、全体の塊としてどんな枠組みになっているかを確認すること」――勝間氏著書『起きていることはすべて正しい』(2008年、ダイヤモンド社)内「巻末付録(1) 運を切り開く『勝間語』事典」《フレームワーク化》の項より。

*14:マックス・ウェーバー(Max Weber)… 1864年、プロイセン王国(当時)のエルフルト生まれ。20世紀を代表する社会学者。フライブルク大学教授を経て、ハイデルベルク大学教授。主著に『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『経済と社会』『古代ユダヤ教』ほか多数。1920年没。

(構成=歌代幸子 脚注=編集部 撮影=佐藤 類)