岡本太郎生誕百年事業への思い
“まだないもの”を世の中に送り出そうとするプロジェクトで、リーダーとなる者の大切な役割。それは、その価値を理解してもらい、さらに共感してもらうこと。
2011年、岡本太郎生誕百年事業のとき、ぼくはひたすら
「目的は岡本太郎の顕彰ではない。主役は次代を生きるぼくたちだ」
「TAROの遺伝子を受け継いでなにができるのか、それを自分自身に問いかける年にしたい」と言いつづけました。
15年前に他界した作家の誕生日をみんなでお祝いしましょう、などと言ったところで話にならないからです。
糸井重里さんの手によるテーマワード「Be TARO!」を前面に押し出しました。
「ひとり一人がTAROになればいい」というプロジェクトの思いを、たった2語でかんぺきに語り尽くしています。
“太郎と遺伝子”をモチーフにした、グラフィックデザイナー・佐藤卓さんによるシンボルマークも、プロジェクトの意志をパーフェクトに表現していました。
人はだれも、経験のないことはイメージできなし、イメージできないものとは距離を起きたいもの。新しいものごとを生み出そうとするときこそ、コミュニケーションが鍵になるのです。
このとき役に立つのがプロジェクトのビジョン、すなわち「物語」を語ること。
リーダーの仕事はプロジェクトのバックグラウンドにある志を語る、すなわち“なにをつくるのか”だけでなく“なぜつくるのか”まで伝えることなのです。
※本連載は書籍『世界に売るということ』(平野暁臣 著)からの抜粋です。