抵抗勢力がいる

【白河】今、安倍政権の主導のもと、一生懸命ダイバーシティに取り組んでいますが、今後の日本のダイバーシティの行方はどうなると思われますか?

【松本】大会社が率先してやらなければいけないでしょう。中小企業のひとつやふたつがやっても全体は変わらない。強権発動しないと難しいですね。僕はクォータ制には賛成です。

しかし大きな問題は、数字合わせになること。「2030」といっても、結局はスタッフ部門の女性を偉くして、ライン部門はやらないということになりかねない。営業や工場は相変わらず男の世界で、人事や広報などのスタッフ部門に女性が集まる。こういうアンバランスな体制ができる。それは本当のダイバーシティではないんです。

僕がジョンソン・エンド・ジョンソンのときに、14ある部門の6部門を女性のトップにした。何の問題もなかったし、むしろ業績は良かった。でも日本では、本音ではダイバーシティが嫌だという人が多いと思います。問題は、そうした抵抗勢力もあって、動きが遅すぎるということです。Too lateどころじゃない。Tooooooo lateです。

【白河】気がついたときには遅すぎるということでしょうか?

【松本】そう、アジアはどんどん変わっている。日本は少子化の影響もあって成長は期待できない。その中でカルビーだけ成長せよというのは難しいです。あらゆるリソースを使わないといけない。そのリソースの中で一番日本に欠けているものは何かというと女性ですよ。簡単なことです。安倍さんもそう言っているけれど、あとは「Just do It!(やるっきゃない!)」これだけです。

【白河】アジアの他の国とは違って、家事の外注が少ない日本では、女性には仕事も家事育児もかかってきてダブルワークになりがちな現状です。もっと男性も家事責任をという議論もありますが、どう思われますか?

【松本】そこは結婚時にしっかりと「契約」しておくしかないね。あと、昔は男はそこそこ働いて収入があって、それでなんとかやっていったけれど、今、男の収入も多くないからね。

昔は、たとえば35歳から40歳ぐらいの男は700万ぐらい稼いでいた。それで奥さんは働かなくてすんだ。今いくら稼いでいるかというと。男450万、女250万で足して700万円。こんな家族が一般化してきたんです。そうすると、450万しかもらってないんだから威張るなと。もっと家の仕事やれということになる。