共働きがますます重要になる

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【白河】 これから若い世代が安心して結婚して子供を持つためにも、今経営者は多少時間的に制限がつく働き方をする女性を雇い続けるか、男性のお給料を2倍にするかの選択を迫られていると思います。

【松本】それは本当にそうですね。世界との競争が始まったから、昔みたいに男だけにたくさん払うことはできない。これは日本の企業全体の問題です。夫婦で働いて、足して生活をやっていくしか手がないんです。

アメリカでもそうですよ。昔は平均したら夫婦共働きで6万ドルぐらい収入があった。それが今は減ったから、仕方なくそのお金で生活しようとすると何が起きると思いますか?

美味しいものを安く買いたいという心理が働いて、ウォルマートなんかはそれで成長したんです。アメリカの景気が悪くなって世の中Everyday Low Priceになりました。失業者も溢れた。そのときに出てきたレーガン大統領は何をやったかというと、仕事を増やしたわけですよ。一説には3000万から5000万人ぐらいの雇用を増やした。増やそうと思ったら、全体の給与のレベルを下げざるを得ない。その後は、マジョリティの給与はあまりあがらなくなった。トップはあがりますが、CEOは1人しかないので、10億もらおうが20億もらおうが大した問題ではない。しかし社員一人ひとりの給料がこれから大きくあがるということはあり得ない。日本もそういう時代だということです。

【白河】ますます、共働きが重要になりますね。男女ともに雇用が確保できることが今後の日本の少子化のためにとても重要になると思います。しかし、経営的な視点で考えれば、工場などを集約して、生産を海外へ……ということになると思うのですが、松本会長は雇用もしっかりと守っていらっしゃる。

【松本】僕はクビ切りが下手だし、クビを切るの嫌いなんです(笑)

できるかぎり今の雇用を守りたいですね。工場が多すぎて本当は集約しないといけないんですが、難しいです。例えば、鹿児島の工場と千歳の工場を1つにしたら、場所はその中間地点におくしかない。しかし、今鹿児島にいる人も千歳にいる人もみんな通えないからクビになってしまいます。雇用を守ることは非常に大事。特に地方の工場がなくなったら、多くの人の働く場所がなくなりますから。

会社はね、儲けたらいいわけじゃないですよ。カルビーのビジョンは、1番は、顧客と取引先。2番は、従業員と従業員の家族。3番目は広い意味でのコミュニティ。株主さんは4番なんです。