日本が同点に追いつかれたとき、そういったマネージメントができていたかといえば、その意図は見受けられませんでした。2戦目までに勝ち点1を獲得し、第3戦まで決勝T進出の可能性を残しました。しかしながら、コロンビア戦に勝たなければ進出できないような状況にしてしまったことが、今回の大きな敗因だったでしょう。

優勝候補の筆頭とまでされたFIFAランキング1位のスペインがグループリーグで敗退し、国際経験が少ないため強さの序列ではほぼ最下位であったコスタリカがグループ1位で決勝トーナメントに進出しベスト8という結果を残すなど、サッカーはあらゆるスポーツの中でも不確定要素が大きく、データによる分析で、ワールドカップのような短期決戦の予測を行うのは困難とされていました。しかし今回の統計的手法による分析では、マクロな部分である程度の大まかな予測が可能であることを示唆しています。

コロンビアは大会前にファルカオという絶対的エースが代表選考から外れるというアクシデントがありましたが、J・ロドリゲスというニュースターの台頭や、他のタレントの活躍によりチーム力を維持できたと感じます。しかしながら準決勝におけるブラジルは、ネイマール、チアゴ・シウバが欠場したことが影響したせいか歴史的大敗を喫しました。

今後、統計学が担わなければならないのは、主力の不調や累積警告、怪我による離脱など突発的に発生する要因が、勝敗にどのような影響を与えるかを科学的に分析するという、ミクロにおける解析です。そのためのツールは着々と開発されていて、選手の動きをモーションキャプチャーで捉え、選手のプレーを量だけでなく、質と紐付けて収集することが可能となります。その結果、プロ野球では実用化されてきた選手個人の勝利貢献度や得点期待値といった具体的な数値評価が、サッカーの世界でも普及し、代表選考の基準や、スターティングメンバーの選考に活用される日も遠くないでしょう。

※1:「失点は無視したのか」というご指摘を受けたことがありますが、「失点」は相手国の「得点」として加算されており、ご心配には及びません。
※2:実際3チームともコロンビアから勝ち点を奪うことはできず、勝ち点9でコロンビアは1位通過しました。

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