日本は子育て支援体制が整っていない

日本企業は、私たちを含めて、女性の管理職がとにかく少ない。管理職の女性比率は先進国の半分にも満たずかなり低いのです。これは、日本の教育に原因があるわけではない、と思います。女性の大学進学率は、男性のそれとほとんど変わらないからです。教育ではなく、原因はむしろ、職場環境にあると考えます。

日本の職場環境は、女性にとって好ましいものではない。たとえば、子育ての支援体制が整っていない。第一子を妊娠した6割の女性が、不本意ながらも、会社を辞めていく、と聞きます。

企業ができることはたくさんあります。たとえば、勤務時間を柔軟なものにしたり、自宅勤務を可能にしたり。私たちは、出産・育児に伴う休業や子の看護休暇などの制度を整えていますが、さらなる改善もしなければならないでしょう。

私はトップとして、全国各地の営業店などを回って、社員たちの声を聞くようにしています。働く女性たちの手厳しくも、もっともな批判や意見を、彼女たちが最大限に能力を発揮できる職場づくりのために、どんどん採り入れていきたいと考えています。

昨年、女性社員を中心に社内組織「ジャパン・ウィメンズ・ビジネス・ネットワーク(JWBN)」が発足しました。女性社員が活躍できる会社風土をつくることを目標に掲げています。メンバーが、女性が活躍する上での課題などを話し合い、全社を巻き込んだ取り組みにつなげています。今春、女性のキャリアを支援するためのフォーラムを東京で開き、全国から多数の女性の参加がありました。

男性社員の中には戸惑いがあるかもしれません。しかし彼らは、女性の能力が会社の成長に不可欠である、と理解しているはずです。全社員が一丸となって、成長市場である日本の事業展開を進めていかなければならない。

こうした取り組みの「旅」は、まだ始まったばかりではありますが、女性が活躍できる会社風土、そして社会をつくるためには欠かせないものなのです。

メットライフ生命保険株式会社 代表執行役 会長 社長 最高経営責任者
サシン・N・シャー

1967年生まれ、米国出身。米国スティーブンス・インスティテュート・オブ・テクノロジー卒。99年メットライフ入社。2011年アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニーリージョナル専務執行役員、12年メットライフアリコ代表執行役専務最高執行責任者などを経て、現職。
(構成=金澤匠)
【関連記事】
出世と出産の二兎を追う2つの方法
育児は、何百万円のリーダー研修の価値あり
商品開発に女の発想をどう生かすか
GE流「野心的女性」の育て方
在宅役員、バリイクメン……P&Gの「柔軟すぎる働き方」