グーグルは昨年、グーグル・クロームというブラウザを発表した。これは一見、機能の足りない閲覧ソフトにしか見えないが、その設計思想はこれまでと大きく違う。複数のページを開いたとき各ページの動作が独立していて、1つが暴走してもほかに影響しない。クロームは閲覧ソフトではなく、複数のソフトウエアをインターネットで並列に実行するプラットホームなのだ。

このようにインターネットを、いわば電力のような共有のインフラとして使おうという発想を「クラウド・コンピューティング」と呼ぶ。『クラウド化する世界』は、これについてビジネスの視点から書いたものだ。ただ電力と違ってクラウドでは、世界中のコンピュータで分散的に処理を行い、インターネット全体が巨大な並列コンピュータとして動く。いわば全世界のユーザーが電力消費とともに発電(情報発信)も行うのだ。

ところが日本政府が力を入れているのは、大手コンピュータ・メーカーを集めて国産検索エンジンをつくる「情報大航海プロジェクト」や、世界で最も高価なスーパーコンピュータ「京速計算機」だ。特に後者は、30年前の設計思想のスパコンに1154億円もの税金をつぎ込む重厚長大型システムだ。