現実を見据えていない集団的自衛権の議論には意味がない。日本が本当に議論しなければいけないのはアメリカが要求している「双務性」を受け入れるかどうかである。双務性を受け入れるなら、アメリカの要請に応えて、グレーゾーンでも地球の裏側でも自衛隊を出さなければならない。
イラク戦争ではイギリス軍やオーストラリア軍に多大な人的被害が出たし、アフガン戦争でアメリカに協力して派兵した14カ国すべてが2桁以上の戦死者を出した。
過去20年を振り返っただけでも、アメリカが派兵を要請した「普通の国」ではいずれも大きな犠牲が発生している。しかも、問題なのはアメリカが引き起こした戦争に大義がないことだ。双務性を受け入れれば、今後、意味のない戦争に付き合わされて、多くの日本人の命が失われることになる。かといってアメリカとの双務性を拒否するとなれば、自分の国は自分で守らなければならない。すなわち日米安保はそのまま維持するにしても、国防力の自立が必要になる。その場合もまた日本は多くの労力と犠牲を払うことになるだろう。
戦後長らく平和憲法に安住して「一国平和主義」を謳歌した日本は、アメリカとの双務性を受け入れたらどうなるのか、拒否したらどうなるのか、という「現実」に国民全体が向き合い議論しなければならない時期にきている。
(小川 剛=構成)