毎月の海外旅行も可能に

若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)
人材・組織コンサルタント/慶應義塾大学特任助教
福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。NEET株式会社代表取締役会長、鯖江市役所JK課プロデューサー。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。様々な企業の人材・組織コンサルティングを行う一方で、全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生が自治体改革を担う「鯖江市役所JK課」など、新しい働き方や組織づくりを模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施中。
若新ワールド
http://wakashin.com/

一方の日本は、前述したとおり、高校卒業後はできるだけ早く大学に進学し、大学を卒業したらすぐに週5日フルタイムで働くのが一般的で、理想的だとされてます。平日は仕事だけで精一杯(残業がない職場を「楽だね」と特別視する人もいます)、休みの日は体を休め、必要な買い物をしたりするだけでほぼ終わってしまう。仕事以外のことを考えたり、別のことにチャレンジするなんていうのは、かなり難しい状態です。

でもこれでは、日々の生活や将来に対する意義を見い出したり、自分の可能性を十分に模索していくことができません。「若いうちは脇目もふらず全力で仕事に打ちこめ!」という人もいますが、もうそんな時代ではありません。生活環境が底上げされ、若者の多くは、ただ稼いで消費するだけでは充実感を得られない。それは、単なる「甘え」ではありません。仕事や職場が、人生のほとんどを担ってくれたのはもはや過去の話。社会の変化に対応できるか否かの、非常に深刻で複雑な課題に直面しているのです。

それで、「週休4日で月収15万」という就職サービスを、実験的にやってみようと考えました。この条件で正社員として働ける会社は現状では少ないので、まずは派遣会社(株式会社ビースタイル)を通した派遣社員として働くことを前提としています。月収15万円とはいえ、時給に換算すればそんなに悪くはありません。週3日は密度の濃い仕事を集中的にやり、そこで稼いだお金を使って、残り4日を好きなように過ごす。こんなワークスタイルがあってもいいはずです。

若くて独身であれば、月15万円あれば都心でもなんとか生活できるし、週4日の休みがあれば、仕事以外のことも本格的に取り組めます。休みの取り方も基本的には自由なので、例えば、普段は郊外の田舎や実家に住み、勤務日のみ会社近くのビジネスホテルに泊まるということも可能です。平日に格安航空会社を使えば、毎月の海外旅行も夢ではありません。モラトリアムがずっと続くのは問題ですが、大学卒業後、20代に限っていえば、このようなワークスタイルはむしろ「健全な寄り道」だと思います。

ちなみに、仕事が週3日でいいということは、それなりのパフォーマンスが求められるということです。働く時間は、とことん集中する。仕事に必要なスキルや態度を身に付けることも、「週3日だからできない」なんてことは決してないはずです。