――欧米当局にとどまらず、日本国内でもカルテルの摘発が相次いでいます。北陸新幹線の雪を溶かす設備の設置工事や、自動車を輸出する船便の貨物運賃……など、談合を取り締まる姿勢が厳しくなっているように思えます。
今年、職員が官製談合防止法違反罪で起訴され、謝罪する鉄道建設・運輸施設整備支援機構の幹部。(時事通信フォト=写真)

【杉本】カルテルに対する基本的な考えですが、反競争的なやり方は企業にとってよくないし、日本経済にとってもよくないし、さらに消費者にとってもよくないということで、警鐘を鳴らしているわけです。私の前任者である竹島一彦委員長は「公取は吠える番犬になる」と言いました。日本企業は反競争的な行為に甘えてはいけない、グローバル化する経済の下で公取はしっかり監視していますよ、というメッセージを送っているのです。「公取は企業を敵視している」と多くの日本企業が考えがちであれば、そんな意識では今の時代、通用しないと思います。

新規参入者が挑戦できる環境を整備

――インターネット社会の競争政策について、仮想空間をデジタル情報が激しく行き交う、デジタルエコノミー時代の競争のあり方をどう考えますか。

【杉本】日本も世界各国も、今までいろいろと対応してきていますが、ソフトウエアを作動するための基盤である「プラットホーム」は、“Winner takes all”つまり一人勝ちになりがちなところがあり、独占的になりやすいわけです。デジタルエコノミーの下では、デファクトスタンダード(事実上の標準)をつくったところが有利ですし、ある意味でデファクトスタンダードにのっとらないと商品を選ぶ消費者も困ることになる。だから、一人勝ちになってはいけないということではないけれども、それに対して新規参入者がきちんと活動ができるように監視していかなければいけないということだと思います。ヨーロッパでは米グーグルの検索サイトが問題になっていますし、スマートフォンの特許をめぐる米国アップルと韓国サムスン電子が争う侵害訴訟は、世界10カ国で50件以上の裁判が続けられています。