「就業規則に違反した社員を処分するときは社員に自認書を書かせますが、それは自ら認めたという事実が懲戒処分を補強する材料になるから。刑事事件でいうと、自認書にあたるのが自白です。自白していれば、企業はクビを切りやすくなります」

身に覚えのない罪を認めるのは名より実を取るためだが、その結果、会社をクビになれば元も子もない。

示談についても注意が必要だ。性犯罪や暴行事件は、被害者と示談をして被害届を取り下げてもらうことで不起訴になる確率が高まる。そのため冤罪であっても、あえて示談にするケースはありうる。しかし示談の成立が、必ずしもいい結果につながるとはかぎらない。

「強姦を疑われた学生が相手方と示談しました。ところが示談を根拠に、大学は卒業2日前に学生を退学処分に。学生側は、トラブルを大きくしないための示談であり、本当はやっていないと主張しましたが、結局そのまま押し切られました」(長谷川弁護士)

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“自白”するかどうかのジレンマ

示談にしなければ起訴のリスクが高まるが、示談にすれば会社や学校にいられなくなるリスクが高まる。八方ふさがりだが、リスクを減らす方法はあるのか。最後に、長谷川弁護士はこうアドバイスしてくれた。

「示談にしたことが会社に知られなければ処分されることはありません。示談は被害者側からリークされることもあるので、示談に秘密保持条項をつけるといい。内容もなるべく抽象的にして、万が一漏れたときに『行為を認めたわけではない』と主張できるようにしておいたほうがいいでしょう」

(図版作成=ライヴ・アート)
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