困難に挑んできた経営者たちが見出した「束ねるための秘伝」を紹介する。認識・関係・環境・人格の4つのアプローチに分けて、それぞれの方法を検討してみよう。

いつの時代でも基本はチャレンジ精神でしょう。新しいマーケットを開拓しようと頑張ることで洞察力が備わり、新しい考え方も生まれてくる。そのためには情報が必要です。それも書物で得るだけではなく、実際に自分で見たり、聞いたり、あるいは人と接したりして得る、生きた情報が重要です。私の経験で言えば30代の前半に、群馬県大泉町で分譲住宅を企画したことが原点になっています。最初は東京への通勤者向けを想定したのですが、自分で現地に赴き、調査した結果、これから多くの企業が進出し、企業城下町として発展する可能性が非常に高い場所だと判断しました。そこで、現地における我々のポジションは何なのだろうと考えてみたわけです。

私は企業の担当者や労働組合の方と膝を突き合わせ、ときには酒も酌み交わしたりしながら、情報を集めました。そしてわかったことは、この土地に転勤を希望する理由の一つとして「持ち家が持てる」という方が多く、そうした方は「ここに骨を埋める」覚悟を持っているということでした。一方、既存の建売住宅の多くは、確かに安いけれど、これでみなさんの満足度が満たされるだろうかとの印象でした。そう感じた私は、敷地を従来の物件の2倍以上にし、高級感のある住宅造りをイメージしたのです。

(芳地博之=撮影)
【関連記事】
結局、40代をどうすごせば社長になれるのか
写経を通して養ったチャレンジ精神
リーダーの役割はトレードオフの断行 -ローソンCEO 新浪剛史氏
チャレンジ精神の貧乏はいらない -オリックス社長 井上 亮氏
家康から学んだ「部下の力を活かす」我慢の心 -三菱地所会長 木村惠司氏