日立と三菱重工が合併して、ボンバルディアまで引き入れれば、GE対シーメンスという世界の重電業界の構図の中で、存在感を際立たせることができる。鉄道においても日立とボンバルディアが組めばシーメンスやアルストムを抜くし、上記のようにアルストム全体の買収に成功すれば1兆6000億円の売り上げで中国北車と中国南車を抜いて世界一となる。
つまり日立と三菱重工の経営統合があれば、その次の世界へのステップはグッと踏みやすくなるのだ。実はこの話は11年に実現寸前まで進んだことがあった。しかし(詳細は不明だが)正式発表前に日経新聞にスクープされたことに重工側(多分金曜会)が狼狽して、統合は幻に終わったのだ。
それに、完全合併となると(優良企業)三菱電機を入れるかどうか、という問題もある。日立としてはエレクトロニクスで東芝、三菱と血みどろの戦いをしてきた歴史もあるし、事業領域も相当重なっているため、三菱電機との合併はすぐには難しいかもしれない。
そうした“わだかまり”や“しこり”を乗り越えて、統合の2幕、3幕目を迎えられるかどうかが、日立と三菱重工にとっても今後の世界戦略のカギとなる。GEやシーメンスがアルストム買収劇で遠い彼方に過ぎ去ってしまうのか、ここで国内の勢力を結集して世界戦に打って出るのか、日立(および三菱重工)は今まさにその分岐点に立っている。
(小川 剛=構成 AFLO=写真)