常にオンの状態で生きている

いま、スローガンで働き始めて1年が経とうとしています。私にとってここは「理念」で選んだ初めての会社となったわけですが、実際にそういう視点を持って会社を選んでみると、やりがいの感じ方もずいぶんと違うことを実感します。

例えば、新規採用では学生たちと数カ月単位で付き合うし、一人ひとりの顔が見える形で仕事をするわけです。スローガンの主力サービスである「グッドファインド」に登録していない優秀な学生を探すために、人づてに情報を集めて大学のカフェで面談をしたり。

私の頃はまだ学生起業やインターンもまだまだ少なかったですが、最近は本当にいろんなことをしている学生がいますね。彼らのような人材を優良なベンチャー企業とマッチングできる仕組みをつくり上げていければ、それこそ社会を良くしているという手触りを感じながら働けるようになるかもしれません。いままでは仕組みができたら仕事がつまらなくなっていたのだから、その意味では働く上で「理念」を持つことの大事さに気づかされたような思いですよ。

そうした気持ちで働いていてもう一つ気づくのは、時間を切り売りした対価として給料をもらっている、という感覚がなくなることですね。プライベートと仕事が混じり合って、常にオンの状態で生きている実感が強まるんです。

些細な話かもしれませんが、昨日も妻と一緒にワイナリーに遊びに行ったとき、「これを今の仕事に当てはめるとどうなるだろう」とつい考えている自分がいるわけです。

葡萄を絞って樽に入れて醸造するとワインができる。その樽にも樹齢や乾燥具合やトーストの具合があって、その様々な要素が合わさって香りや味が変化していく。これって学生がうちのセミナーに来て、社会に出るための準備をしていく過程に似ているよな、じゃあ樽に当たる部分はなんだろう、とか。そうしたら「顔が真剣過ぎる」と妻には怒られましたけど。

そうそう、最近ではこれまで疎遠だった父親との関係も、少しずつ変わってきたように感じているんです。父はもともと東大の法学部にいた人で、周りが官僚になるのが当たり前の時代に、これからは民の時代だと思って銀行に行ったんだ、と最近になって話していました。ああ、この人も民から世の中を変えたいと思った人なのか、という発見は私にとってはちょっと驚きで、やっぱり対話しないと何も分からないものなんだと痛感しました。父親がそういう気持ちで就職をしたことを知るのに、20年以上もかかってしまった。

なので、結局はその時代時代で、何が面白い選択であるかが変わってきただけなんだな、って今は思います。最初の就職先を決めたとき、父親が反対しつつも最後は応援すると言ってくれた理由がいまいちわからなかったのだけれど、そうだったんだな、と何か納得したような気持ちになりましたね。

スローガン:主力事業は企業向け採用支援サービス。東大、早慶などの上位校の優秀層をベンチャー企業に紹介している。設立2005年。社員数36人。
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