人材確保のためにハワイ支社設立
この会社の事業は全国の主婦をユーザーとして集めて、口コミのマーケティングなどを展開するというものでした。「貰える試せる」を略した「モラタメ」というサービスが立ち上がる頃で、システムの開発から実務的なことまで横断的に仕事を経験させてもらいました。
私が在籍していたのは2年間。新しい事業の立ち上げって、これまで経験したことのない仕事や課題が次々に降ってきますよね。そして事業が伸びていくに従って、無駄を省いたり効率化をしたりという試行錯誤を繰り返して、誰でも成果を出せるような手順や仕組みを構築していく。そうやって会社というのは大きくなっていくわけですよね。
だから、私はそのなかで自分が成長を感じられるうちは働き続けよう、と考えたんです。サービスが軌道に乗って仕事がルーティンワーク化されるまでいて、次の会社に移ろう、って。転職というのは自分の成長が止まったときにはもう遅い。成長を確かに感じられているうちでなければ、好みの会社に行けないと思ったので。
ただ、そうして入ったサイバーマーケティングを経て私がスローガンに来たのは、最初の転職のときとは少し異なる理由からでもありました。
前職で新規事業を担当したとき――わずか1年間のことなんですが――子会社の代表を任されていたことがあったんです。そのときに新規事業のための人材採用にすごく苦労したんですよ。
当時、ゴルフ場の予約の世界ってIT化が本当に遅れていて、ほとんどブルーオーシャンみたいなものだったので、業績はうなぎ上りでした。で、事業が拡大していくと、また新たな事業をしようという話になるわけですが、そうなると優秀な人材が必要になる。だから、私たちも労働環境を良くしようと考えを練って、いいプログラマーを採用するためにハワイオフィスをつくったりしたくらいなんです。とにかくそういう工夫をしないと人が採れない。
では、優秀な人材はどこにいるんだろう、と実際に人を探してみると――社長の伊藤(豊)がよく言っているように――結局はほとんどが世の中の誰もが知っているような大企業で働いているか、そうでなければ自分で起業しているかなんですよね。
要するにベンチャーには優秀な人はなかなか入ってこない。それが現実なんです。シリコンバレーなんかだと起業ってクールなことだとされているのに、日本では「え、ベンチャー行くの」と周りも親も眉を潜めるような雰囲気が未だにあるというか……。特に私の時代はそうでした。
自分自身がベンチャー企業の経営の中心を担うようになって採用に苦労していると、何だか段々と腹が立ってきましてね。別に日本がシリコンバレーになる必要はないけれど、せめてもうちょっと優秀な人材が大企業にばかり偏るのではなく、切実に必要とされているベンチャーにもっと流動していけるようなシステムがこの国には必要だ、と思うようになったんです。
私はネットのいろんなサービスを使ってみるのが好きなんですが、そんなとき「ソクルート」というサービスを見つけました。フェイスブックのアカウントを使い、ユーザーと会社との類似度を判定して就職の意思決定を支援するサイトで、調べたらそれをやっているのがスローガンだったんです。会社のホームページを見たとき、「才能の最適配置」という言葉が胸に刺さりました。