FCVの標準化に詳しいトヨタの河合大洋・技術統括部担当部長は、日本案が先行できた理由をこう説明した。
「05年に型式認定を取る際、安全性の考え方をその中に全部入れていましたし、それをベースに海外と合わないところを修正してきました。いわゆるGTR(Global Technical Regurations)という国際標準が正式に認可される見通しになり、あとは各国・地域がそれぞれの法規に定めるかどうかで、その作業は今年から来年にかけてほぼ完結すると思います」
トヨタとホンダが15年の市販開始を発表したのは、こうした国際標準化の動きが背景にあった。近年、標準化が産業に及ぼす影響はますます高まり、通信に関する標準規格獲得の失敗が、第2世代(2G)以降の日本の携帯電話の敗北につながったのは記憶に新しいが、標準化の成否が、オセロゲームのように市場開拓の勝敗を決めるカギになりつつある。
先述のように、国際標準として認可されるかどうかは、仲間づくりとともにデータの蓄積が大きくものを言う。
「世界が注目! 水素エネルギー新市場(http://president.jp/articles/-/12407)」で福岡県の水素タウン構想を紹介したが、ここに水素エネルギーの産業育成に必要な関連製品の開発を支援する「水素エネルギー製品研究試験センター」が設置されている。ビッグデータ時代も想定し、水素に関するあらゆるデータの蓄積・分析を行う施設である。センターでは、FCVや水素ステーションで使うバルブや配管、センサーなどの耐久試験を行い、製品開発の手助けはもちろん標準規格づくりも支援している。14年4月には大型水素貯蔵タンク用の試験施設を増設したが、渡邊正五理事長・センター長は、「世界最大規模の水素専用試験センターになり、実際に国の認証を取るための試験一式はここですべてできるようにした」と語り、標準化獲得に向けた受け皿づくりに余念がないことを強調した。