20世紀はクルマの時代だったと言われるが、21世紀も「水素エネルギー」の出現で、自動車業界が激変する可能性が高まっている。新たな“富”を生むビジネスの最前線に迫る――。
(※第1回はこちら http://president.jp/articles/-/12895)
標準化の成否が市場開拓の勝敗を決めるカギになる
では、ここにきて世界の自動車大手が、一気に合従連衡に動き出したのはなぜなのか。この背景には、標準規格やデファクト戦略で勝ち抜くための国際標準化がネックになり、海外のライバル会社とも手を組まざるをえない現実があるためだ。
特にFCVの場合は、水素の爆発を防ぐために厳しい安全基準が求められる。基準を獲得するには、何度も実証試験を繰り返し、起こりうるあらゆる状況のデータを蓄積する必要がある。集めたデータをもとに標準規格のドラフトを作成、海外メーカーに示して“仲間づくり”を進め、公的な標準化機関に提案して、賛成多数による採決で承認される必要がある。
標準化への勝利に向かって、各メーカーは必死になって道を模索しているのだ。
日本は早くから水素の成分やタンクの耐久度、水素ステーションでの充填時の圧力など、数十項目にのぼる実証試験のデータを蓄積してきた。その結果、13年6月に日米欧など33カ国・地域が集まった国連の会議の場で、日本が提案した4つの安全基準が全会一致で採択された。車が衝突しても水素が漏れ出さない仕組みや、タンクに高低の圧力を繰り返し2万回以上かけても変形しない耐久性……などが柱になり、国際標準化の初戦では日本の進んだ技術が世界的に認められた。
今後、日本案が正式に国際標準として承認されると、日本メーカーは国内仕様のまま、海外に輸出できる。輸出先の国・地域に合わせて仕様を変える必要がなくなれば、日本は海外メーカーに先駆けて量産体制を確立しやすくなり、FCVの市場開拓で一歩先んじることが可能となる。