HVとFCVの技術は、ものすごく親和性が高い

トヨタは、13年11月に開催された東京モーターショーで、15年に市販予定の「FCVコンセプト」を、会場のメーンに置いて展示した。これまで多目的スポーツ車(SUV)をベースにした試作車を公開してきたが、より小さなセダンタイプ(4人乗り)をお披露目したのは、これが初めてだった。

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ハイブリッド車(HV)技術と燃料電池車(FCV)の技術は連動している

FCVコンセプトは、従来モデルに比べてスタックをコンパクトにし、座席の下に収めて、車内空間を広く取っている。水素タンクの本数を4本から2本に減らし、炭素繊維素材を採用して強度を高めたうえに、車体全体の軽量化も図った。フロントグリルには、空気(酸素)を取り込む口があるが、いかにも水素と酸素の反応で電気を起こすイメージを強調するデザインといえる。

トヨタがFCVの研究開発に着手したのは、90年代初頭である。02年にリース販売の形で世に送り出したが、水素を貯めるタンクの容量が小さいために航続距離が300キロメートル以下、1台当たりの製造コストに数億円がかかるなど、一般消費者が手に入れられる代物ではなかった。

それから10年余、東京モーターショーに展示された「FCVコンセプト」は、大きく進化した。改良された点は主に2つあり、(1)満タンにかかる時間は3分程度とガソリン車並みの時間で充填が可能となった、(2)航続距離は700キロメートルに伸び、エアコンなどを利用した実用距離でも500キロメートル以上走ることができる、など性能が向上した。

トヨタ自動車 技術開発本部 
FC開発部 部長 小島康一

このコンセプト車は、ほぼ完成形といい、15年以降、日米欧で順次発売する計画だ。

水素を燃料にするFCVは、従来のEVやハイブリッド車(HV)と、まったく違う構造の車ではないかと捉える人もいるに違いない。ところが、FCVは、スタック部分を除けばHVとよく似た構造のため、97年にプリウスを発売して以来HV分野で先行してきたトヨタにとって、自社が培ってきた特許やノウハウの強みを大いに生かせる世界でもある。この点を小島康一・技術開発本部FC開発部部長に質すと、「HVとFCVの技術はものすごく親和性が高いんです」

と前置きして、こんな答えを返してきた。

「燃料電池車の構成は、内燃機関をスタックとタンクに置き換えただけなので、全体の仕組みはハイブリッドシステムそのものなのです。基本的に燃料電池とハイブリッドの技術はイコールですから、これまで社内で磨いてきたハイブリッド技術を十分生かすことができます」