また、老後の必要資金を計算する場合、平均余命を基準にするのが普通だが「半数の人は平均余命よりも長生きするので破綻します。そのため、当研究所では25%の生存確率となる年齢で計算しています」と野尻氏はいう。直近の簡易生命表から生存確率25%となる年齢を算出してみると、40歳男性の場合は89歳3カ月、40歳女性は94歳7カ月で、60歳定年なら35年間の生活費が必要となる。

以上を前提に退職後に必要となる資金総額を計算してみる。年間408万円×35年間で1億4280万円。厚生労働省が発表している平成21年度の標準世帯厚生年金支給額は月額約24万円で、65歳から95歳までの30年間で受け取る額は8640万円。その差は5640万円だ。今後の年金制度の改革等を考えると上積みしておく必要があるので、6000万円程度は自前で用意しなければならない。

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図1 逆算の資産運用

「ただし、図1のように60歳から75歳までを『使いながら運用する時代』、75歳から95歳までを『厳格に使う時代』と位置付けた場合、60歳時点で6000万円を用意しなくてもよくなります。60歳から75歳まで年平均3%の運用ができれば、月額15万円程度の引き出しなら60歳時点で4224万円、月額10万円程度の引き出しなら60歳時点で2816万円を用意すればいいのです。注意点は、60歳から75歳までの『使いながら運用する時代』は、『毎月15万円』というような定額引き出しではなく、『その時点の運用額の4%』というような定率引き出しにして生活費の調整をすること。定額引き出しの場合、当初の運用が悪かった場合、元本が減ってしまって予定どおり運用できなくなる可能性があるのです」(野尻氏)

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図2 ステップ・アップ投資で3000万円を確保

参考のために、退職後の資金準備のための30代からの投資プランの一例を示しておくと、図2のとおり。年平均3%の運用ができれば、60歳時点で何とか3000万円弱を用意することができる。

ただ、ここでの前提は「最低でも40歳時点で500万円の貯蓄を用意しておくこと」。45歳時点なら1000万円ほどの準備が必要だ。しかし、同研究所が40代を対象に行った調査によると、老後資金として1000万円以上を用意しているのは13.3%にすぎなかった。つまり、40代の9割近くは安心できない状態にあるということなのだ。