肝臓ガンは他の多くのガンと多少異なる性質を持っている。それは予防できるガンであるという点だ。肝臓ガンの80%はC型肝炎、15%はB型肝炎、残りがアルコール、薬剤、カビなど。
とりわけ多いC型肝炎については、リバビリンとペグインターフェロンの併用療法で治癒率が30%から70%へとアップした。C型肝炎患者はどんどん治療を受けてもらいたい。それが肝臓ガン予防の最大の道である。
それでも治療が功を奏さず肝臓ガンになった場合、2004年に出版された『科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン』に基づいて患者の状態に最も合った治療が選択されることになる。
治療の基本は「手術」「肝動脈塞栓療法」「経皮的治療」の3本柱。とはいうものの、やはりメインは手術である。ステージ(病期)~期のすべてに手術の適用は考えられる。しかし、どのステージでも肝機能が悪いと判断されると手術は断念することになる。
また、手術がメインとはいったものの、その一方で新しい動きもある。早期のステージで肝機能が良いケースでは手術が第1選択だったが、今日ではそうともいえなくなってきた。手術の成績と経皮的治療の成績を比較しても、ほとんど差がなくなったからだ。
この経皮的治療とは「エタノール注入療法」「マイクロ波凝固術」「ラジオ波焼灼術」をさしている。
いずれも局所麻酔をした皮膚から超音波ガイドに従って針を肝臓のガン部分に刺して行う治療法。ガン部分に針が到達すると、エタノール注入療法ではエタノールを注入してガン細胞を壊死させる。マイクロ波凝固術では、針は針でも先端に電極のついた直径2ミリ程度の針で、電極をマイクロ波で熱してガンを焼き、凝固・壊死させる。
そして、最も注目されているのがラジオ波焼灼術である。直径1.6ミリの針を刺し、先端からラジオ波を出し、ガン細胞に熱を与えて焼灼する。電極のセンサーで治療部の温度をモニターでき、80度以上になって10分間その温度を維持すると、ガンは確実に焼灼できる。
ラジオ波焼灼術の評価が高いのは、「直径3センチ以下のひとつの肝臓ガンを治療するのに1回の施術ですむ」ことと、「再発率が低い」からである。ただし、死角もある。それは、多少深いところにできた肝臓ガンの治療には不向き、という点である。
いずれにせよ、肝機能やガンのできている場所などを総合的に判断し、治療方法を医師、患者が充分に話し合って決定すべきである。
食生活のワンポイント
肝疾患の食生活のポイントは前回紹介したので、今回はガン予防の食生活のポイントを紹介しよう。
●アルコールは適量に抑える。
アルコールの飲みすぎは肝機能を悪くする。最も細胞を活性化させるのは日本酒では0.7合。これぐらいであれば飲まない人よりもずっと体に良い。1合を超えると飲まない人に軍配があがる。
●食塩を抑える。
日本人は平均で1日に10グラムを超える食塩を摂取しているが、1日7グラムを目指そう。
●食物繊維を充分に摂取する。
1日に必要とされる食物繊維は25グラム。日本人は平均1日15グラムしか摂っていない。もっと積極的に摂って便量を増やし、発ガン物質をスムーズに排出するようにしよう。
●カビに気をつける。
ピーナツ、ピスタチオ、トウモロコシなどにはえるカビは強い発ガン物質を生むので、うっかり口にしないように。
●バランスのよい食生活を。
野菜、果物、魚介類、肉・乳製品、海藻類など栄養バランスの良い食事で、腹8分を心がける。