最近の判例はどうか。会社に虚偽の住所を届け、約4年半にわたり計231万円の交通費を不正受給していたケース(東京地裁・1999年11月)では、会社側が勝訴し、社員の懲戒解雇が認められた。

別の事案もある。月約4万円の定期代が別の場所への引っ越しに伴って月約3万6000円になったのにもかかわらず、3年半にわたって旧住所地からの定期代を不正受給していた例(東京地裁・光輪モータース事件、2006年2月)。これは金額が小さく悪質性が低かったこともあり、解雇は認められなかった。

交通費申告の嘘が発覚した場合、会社は本人の言い分を聞く機会を設ける場合がほとんどだ。その際、領収証や住民票の提出などを求める場合があるが、その対応が不誠実であれば懲戒解雇も十分にありうる。

なお、虚偽の経路や交通手段で通勤しているときに事故に巻き込まれた場合、労災は適用されるだろうか。私用でどこかに立ち寄った際の事故であれば労災の適用は難しいが、上記の住所地を偽って定期代を不正受給していた場合のように、通勤中に事故に遭ったのなら対象になる。もちろん、交通費の不正受給は問題になるが、通勤中であることにかわりないからだ。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=斉藤栄一郎)