コア・ターゲットは十代後半から20代のいわゆる草食系男子。「数年前までは、毛束をひねったり、はねさせたりする“つくりこんだ”ヘアスタイルが人気でしたが、最近はナチュラル志向が目立つ。それに対応した商品が求められていたのです」と、資生堂ウーノ・マーケティングチームの内山正信さんは話す。26歳とターゲット層に近いこともあって、2008年10月に現部署に異動して以来、「フォグバー」の開発や宣伝に一貫して関わってきた。

いまどきの若い男性は、おしゃれには敏感だが、独りよがりのアピールは嫌うという。CMで贅沢にスター4人を登場させたのも、「個性は重視しつつ、仲間であることを大切にする彼らを意識したもの」だと内山さんは語る。

そのイケメン4人衆の効果ではあるまいが、購入者の2割は女性だとか。スタイリング後も自在に手直しできることや、シャンプーで簡単に落とせるという特性は、確かに女性にとっても魅力的だ。

それを可能にしたのが、水溶性のヘアスタイリング成分「フィットポリマー」である。「貼ってはがせる」付箋紙から着想を得て開発された画期的な技術だが、発売半年前に行ったテストマーケティングでは、モニターの反応はいまひとつ。商品に自信を持っていた開発者を、一気に不安にさせたという。

「パッケージの仕上がりもいいのに肝心の中身が評価されない。モニターの方に改めてインタビューしたところ、固まらないからと、使いすぎていたことがわかった。そこで『軽くつけてクシュクシュなじませる』という使用法を徹底して伝える戦略をとったのです」(内山さん)

発売時には、基本テクニックをまとめたDVDと特製コーム付きのパッケージを用意。店頭でも使用法を紹介して、爆発的ヒットにつなげた。全国の営業若手で「フォグ隊」を組むなど、同社初の組織横断的な試みも奏功して、09年秋には男性用整髪市場で首位となった。リピーターをつかめるか、商品の真価が問われるのはこれからといえそうだ。

※すべて雑誌掲載当時

(小倉和徳=撮影)